脳神経ファイル
診療時間
時間/曜日
9:00−12:00
14:00−16:00
リハビリ/検査
17:00−20:00
※○は診察、△は検査およびリハビリのみ、
 −は休診です。
※土曜日は、9:00−13:00まで診療致します。
※休診日 木・日/祝日
※脳ドックは、随時受け付け致します。
診療科目
脳神経外科(MRI/CT検査)
内科・脊椎外科・リハビリテーション科
かづきクリニック
かづきクリニック
〒630-8115
奈良市大宮町5丁目1-10-1
TEL:0742-32-3201
※駐車場あります(20台)
クリニック前駐車場(3台)、第二駐車場(14台)
当院西隣の伏見駐車場の1番、2番、3番が使用できます。
駐車場位置については、受付でご確認ください。
ここでは毎月一回、マイタウン奈良に掲載されている輝いて生きるために/脳神経ファイルを紹介させていただきます。
脳と神経に関する病気や症状について少しでも知っていただくことで、無用な心配をせずにすむように、また必要な診療を受けていただけることの一助になればと思います。
※ファイルをご覧頂くには、タイトルをクリックしてください。
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2010年度

・もう年の暮れ(2010.12)

早いもので、もうこの1年が暮れようとしています。当院も開院して9年が過ぎ、現在10年目に入っていますが、いつになっても日々勉強というか、教えられること、驚かされることの連続といえます。今年はプロ野球のコーチグくも膜下出血で倒れたこともあり、“軽い”頭痛やしびれなどで、脳卒中を心配されて受診される方が多かったのですが、この“軽い“ということの先入観を持つことの怖さを痛感させられる、新たな経験を何例もさせていただきました。まずは(その1)2週間前に左足全体のしびれがあり、一晩寝ると良くなったが、何となく気になり受診。当院受診時、異常はありませんでしたが、念のためMRI検査をしたところ、脳内出血が見つかりました。その時診断して思ったのが、「こんな軽い症状でこんな出血が・・・」ということです。(その2)先ほど他院かかりつけ医を受診していて、急にずきーんとした頭痛があったので、念のため当院を受診しておいてはと勧められ来院。今は何となくじーんとしているだけで、頭痛はありませんとのことでしたが、MRI検査では比較的強いくも膜下出血でした。やはり、「この症状でくも膜下出血・・・」でした。(その3)1ヶ月前に入浴した際にほんの一瞬強い頭痛があり、その後なんの症状もありませんでしたが、やはり念のため受診し、MRI検査で動脈瘤が見つかりました。病院を紹介したところ即日入院ののち手術となり、またもや「これでくも膜下出血・・・」でした。日々細心の注意力を以て診療に当たることを肝に銘じつつ、来年も数多くの知識と経験を積み重ねて、数多くの方々のお役に立てるよう、新たな年を迎えたいと思います。来年もよろしくお願いいたします。

・後頭部の痛み(2010.11)

日常診療で、後頭部の痛みは最も多い部位の一つといえます。
後頭部痛の原因の多くは、普段から肩こりが強ければ、緊張性頭痛が考えられ、キリキリする痛みであれば、後頭神経痛の場合もあります。もちろん頭蓋内の疾患が原因となることもあるため、診断には画像診断が欠かせません。様々な頭蓋内疾患で、後頭部の痛みを来たしますが、中でも見落とやすいものに椎骨動脈の解離性動脈瘤があります。実際、近年MRIで精細な血管撮影が可能になるまでは、ほとんど気づかれずに見過ごされていた疾患です。解離性動脈瘤とは、動脈硬化の進行した血管の壁がひび割れ、そこからにじみ出た血液が、血管の外壁と内壁の間に貯まることで、脳梗塞を起こしたり、出血を来したりする動脈瘤のことです。一般に動脈瘤といえば、破裂して出血するものですが、この場合、脳梗塞を起こす危険もあります。この動脈瘤が頭痛の原因となる際に、特徴的なのは、血管壁のひび割れが進む際に頭痛を来すことです。イメージとしては血管の壁が裂ける痛みと言えます。また、出血や梗塞を来さずに頭痛の原因となるため、見落とされやすくもなります。実際、緊張性頭痛と間違われる場合が多いのですが、放っておくと、やがて脳梗塞や脳出血を来す可能性があるので、鎮痛剤が効きにくい様な後頭部痛では解離性動脈瘤を疑う必要があります。治療は出血や梗塞を伴っていれば、手術や入院治療が必要になる場合もありますが、出血や梗塞などの問題がなければ、血圧管理などで慎重に様子を見ることもできます。その意味では何かが起こる前に早期に診断を付けることが重要で、強い後頭部痛であれば、単なる肩こりからの痛みと考えずに、まずは解離性動脈瘤を疑う必要があります。

・無菌性髄膜炎(2010.10)

髄膜炎にかかったと聞けば、「えらいこっちゃ、どうしよう」と思われる方も多いと思われます。確かにけいれんを起こしたり、意識障害を来したりと、重症化すれば非常に怖い病気なのですが、軽症の場合は自然に治ることも多い疾患です。髄膜炎には無菌性髄膜炎と細菌性髄膜炎の2種類があります。無菌性髄膜炎は、炎症の原因が主にウイルス性の炎症によるもので、おおむね予後はよく、対処療法で治る場合が多いようです。細菌性髄膜炎は小児に多く、小児科でない当院では、これまで診断した髄膜炎のすべてが無菌性髄膜炎です。あくまで当院での傾向ですが、年齢は10−20代の女性がほとんどで、症状は、当初から頭痛を伴う発熱で、熱はそれほど高くなく、多くの場合、風邪の診断で当初は加療されています。実際、無菌性髄膜炎は風邪などの感染症に引き続いて起こることが多く、微熱が続く、頭痛が強く鎮痛剤でおさまるものの、すぐに痛くなってくる、などの症状が4−5日以上続いて当院を受診される方がほとんどです。当初から髄膜炎を心配されて受診される方はなく、脳腫瘍や血管障害などを心配されて受診されます。髄膜炎の場合、頭部MRIなどの画像診断で異常所見が出ることはなく、診断の手がかりは、頭痛の程度や吐き気の有無、項部硬直といって、頸部の屈曲に抵抗があり、背部への放散痛があることなどです。確定診断には腰椎穿刺による髄液検査が必要になります。髄液検査は病院へお願いして、確定すれば、多くの場合、対処療法で1週間程度の安静で回復します。ただ診断までに時間がかかると重症化することもありま。症状があれば早めに医療機関を受診してください。

・コレステロール高い方が長生き?(2010.09)

つい最近、脂質栄養学会というところから、コレステロールは高い方が長生きする、との指針がまとめられました。コレステロールは身体に悪いと考えられている中で、この正反対の意見をどう考えればいいのでしょう。悪玉コレステロールと呼ばれるLDL−コレステロールは、血管の壁を傷め、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞を来しやすくなる。つまり、悪玉コレステロールを下げることが長生きに貢献すると考えられてきました。コレステロールが高い人の方が、長生きすると言われれば、コレステロールは血管には悪くはないの?ということになります。しかし、実際、コレステロールが高い人の血管は黄色く変色し、非常に硬くなっています。脳のMRI検査をすれば、若い人でも血流が悪い部分が目立つ傾向にあります。コレステロールが高い方が長生きする、と言われても、「なんで?」ということになります。この正反対の意見を、私なりに理解するに、コレステロールは現在の基準値よりは、もう少し高くても身体には悪くないということではないでしょうか。コレステロールが身体に悪くないと聞いて、安心されている方もあると思いますが、やはり高すぎることは身体に悪いのは間違いないように思います。コレステロールが基準値より少々高くても、それほど神経質にならず、あわてて薬を服用せずに、バランスの良い食事と適度な運動でちょうど良い加減なのかも知れません。将来、現在よりはもう少しコレステロール基準値を高めにすれば、高いコレステロールが身体に良い、ということにはならないように思います。

・熱中症と脳梗塞(2010.08)

今年の夏は暑い!既にこの号が出る頃には、少しは涼しくなっているのかもしれませんが、現在の暑さからすれば、依然として残暑が厳しい様に思われます。熱中症については当クリニックでもかなりの知識をみなさんお持ちで、いろんな対策法をこちらが教えられることもある程ですが、熱中症と夏場の脳梗塞には共通した部分が多いため、少し書いてみたいと思います。熱中症には症状によって段階があり、水分が不足して頭痛やめまい、失神などを起こす場合、水分と共に体内の塩分が喪失され、けいれんや筋肉痛、倦怠感を起こす場合、さらには水分も塩分も喪失され、自律神経の調節が悪くなり、意識障害や多臓器の血管障害を起こし、生命に関わる場合などがあります。一見して脳梗塞と間違うような症状が多く、実際、頭痛やめまいの後、意識がなくなれば、脳梗塞の可能性も考えて診断することが必要になります。こうした、共通症状が多いことの理由は、脳梗塞の原因にも水分の不足が関わっているからです。通常、動脈硬化の進んだ人の血管で脱水が起きると血液がどろどろになって固まりやすくなり、脳梗塞が発症します。詰まる血管によってはやはり生命にかかわることもあります。熱中症と思われて搬送されても脳梗塞の場合もあれば、脳梗塞と思われて熱中症であったりする場合もあります。言い換えれば、夏場は脳梗塞が熱中症と間違われて、見逃されやすいということにもなります。頭痛やめまいなどの症状が強かったり、倦怠感が強くて手や足に力が入らないような時に、熱中症と即断せず、脳梗塞の場合なども考えて、まずは医療機関を受診することをお勧めします。

・戸惑う脳卒中(2010.07)

最近、日常の診療で「どうすべきか戸惑う」様な脳卒中の方が多くなっています。脳卒中は突然発症し、運動麻痺など日常生活に支障を来す症状を残すため、一刻を争う疾患と言って過言はありません。実際、脳外科医の救急疾患の大半が脳卒中と言え、出来るだけ速く治療を開始することが重要です。当クリニックでも、脳卒中の可能性があれば、MRI検査を実施し、脳卒中の診断がつけば出来るだけ早く、脳卒中の管理の出来る病院へ紹介する、ということを日々心がけています。しかし、最近、手足の動きが悪かったりしても、4−5日から1週間以上も経過して受診し、脳卒中の診断がつく方がおられます。症状が軽く、そのうち良くなるだろうと様子を見られていた方が多いのですが、MRI検査では比較的大きな脳内出血であったり、かなり太い血管が詰まっている場合もあります。このような場合、今後の治療をどうすべきか戸惑います。発症早期に治療すべき脳卒中は、数日や1週間も経過していれば症状は安定し、治療する側としては、入院して点滴したりする時期でもなく、あとは通院でとなるのですが、脳卒中と言われたとたん患者さんは、急に不安感が強くなり、すぐにでも入院治療を希望される方がほとんどです。治療する側と受ける側の意識にかなりの差が生じるために、「戸惑う脳卒中」と言うことになってしまいます。幸い軽症であったことで生じる戸惑いなので、結果的には「戸惑う脳卒中」で良かったのかも知れませんが、状況によっては数日で重症化していたかも知れず、運動麻痺があるような場合は、「ただごとではない」と考えて早期に受診していただくことが大切です。

・101回目を迎えて(2010.06)

なんと、脳神経外科ファイルも、前回が100回目であったとのことでしたが、気づかないまま過ぎ去っていました。そのため、今回は記念すべき?101回目ということで、書いてみたいと思います。元々、この欄を書くきっかけは、たまたま、マイタウンを読んでいると、腰痛や、肩こりの解説などの記事が載っていて、医師が書いた記事ではありませんでしたが、わかりやすく良く書けたものばかりでした。出来れば医師の立場でわかりやすく書ければ、もっと多くの人に様々な病気や、症状などについての知識を持ってもらえるのではないか、特に脳神経外科は難しい印象があり、その疾患について少しでも理解が深まれば、治療や予防などに役立ててもらえるのではないかと考えたことがきっかけです。しかし、いざ書き始めると、わかりやすく簡潔に病気のことなどを、限られた字数の中で伝えるのは非常に難しく、書きたいことの半分も書けず、あとで読み返してみて、「なんのこっちゃ」というような悪文も多々あったように思われます。それでも、「マイタウンみて来ました」と初めて受診される方や、「いつも楽しみにしてます」と言って、この欄の切り抜きのファイルを見せてくれる方、同業の先生方の中にも「いつも読んでるよ」などのありがたい言葉に励まされ、何とかここまで継続してこられました。「先生、もう書くことないやろ」と最近よく言われますが、日々進歩する医療の中で、書くことに詰まることはないはずで、そんなことがあれば自身の勉強不足、と肝に銘じながら、これからもこの欄を続けていければと思います。102回目からもよろしくお願いいたします。

・頭部打撲(2010.05)

頭部打撲には様々な病態があり、中には生命に関わることもあるため、特に小さなお子さんが頭を打った場合などは、本人が元気に走り回っていても、親御さんが不安になって受診される方もおられます。確かに頭の中は外部からはその様子を知ることが困難で、「何かあったらどうしよう」と不安になるものです。しかし、脳は硬い骨で覆われているので、ほとんどの場合、脳への直接の影響はなく、頭痛や吐き気がなければ、様子を見てよく、数日で症状の進行などがなければまず心配はありません。打撲の程度が強くなると、脳が揺さぶられ、脳震とうを起こし、しばらくの間、意識がなかったり、記憶力の低下を来します。意識消失はほとんどの場合ごく短時間でも、受傷後の記憶が数十分程度わからないこともあります。ただ、頭痛や吐き気がなければ、脳の損傷はなく、やはり心配はありません。ただ例外的に、高齢者の場合には、打撲の程度が強くなくても、受傷後4週間程度までにじわじわと脳の表面に出血が貯まってくる慢性硬膜下血腫の様な状態があり注意が必要です。さらに強く打撲した際には、揺さぶられた脳が頭蓋骨に打ち付けられ、脳の腫れや内出血をきたし、脳挫傷の状態になります。頭痛や吐き気に加え意識が悪い状態が続くこともあれば、けいれんで発症したりすることもあります。さらに、周囲の血管が傷んだりすると硬膜外血腫や、硬膜下血腫のように生命に関わる状態にもなります。ほとんどの場合意識状態が悪く、頭痛や吐き気も強くなります。救命のためには迅速な診断と治療が必要になります。いずれの場合においても、打撲の程度と状態に応じた症状の変化について知っておいていただくことが、適切な診断と治療につながることと思います。

・くも膜下出血(2010.04)

くも膜下出血とは、脳の表面にある太い血管に、瘤のようにふくらんだ動脈瘤が破裂して出血する疾患です。強い頭痛で発症することが多く、一般にも非常に怖い病気とは知られているようですが、ただ、頭痛の症状が強い場合、脳梗塞をすごく心配されて受診する方は多いのですが、くも膜下出血を心配される方は比較的少ないようです。日常診療で、頭痛のかたが受診され、MRIなどの検査をして、結果の画像の説明をしている際に、まずはじめに「血管の詰まっているようなところはありませんよ」と説明すると、ほとんどの方はそれで安心されます。逆に、はじめに「くも膜下出血はありませんよ」と説明してもほとんどの方が、まだ安心はできないなというような表情で説明を聞かれ、血管の詰まりがないことを説明してやっとほっとされることが多いようです。頭痛症状を診療する立場としては、まず、くも膜下出血の有無を確認して、そうでなければほとんど脳卒中の心配はないと安心できるのですが、一般には、頻度からいえば脳梗塞の方が多く、比較的身近な疾患であるため、くも膜下出血は怖い病気とわかっていても、脳梗塞の方がどうしても心配になるようです。くも膜下出血が怖いところは、頭痛の症状を言える場合は良いのですが、当初から昏睡状態で重篤な症状で発症することがあることです。出血の程度に応じて重症度が異なり、当初はわずかな出血で、頭痛がする程度でも、再出血することによって重症化することも多く、脳梗塞よりは若い年代で、40−50歳代に多く、治療は開頭手術によるクリッピングや、最近では、細い針金のような金属を動脈瘤に詰める、血管内手術も行われますが、とにかくは、早期の診断と早期の治療が非常に重要です。

・認知症のケア(2010.03)

認知症には様々な段階と症状があり、段階に応じたケアが必要になります。当院へ相談に来られる多くは、初期の認知症の方で、「最近同じことを繰り返し話したり、今まで出来ていたことが出来なくなってきた」など、ある程度自分のことは出来るが、周囲の見守りが必要な方です。このような方には内服薬の投与に加え、デイサービスの利用を勧めます。問題は、このような軽症の方は、介護施設の利用を拒む方が多いことです。また、デイサービスの介護の中心も、症状が進んだ方が中心で、軽度認知症の方が抵抗なく積極的に利用できる施設が少ないことが問題点と言えます。症状が進むと、日常的に介護が必要になってきます。家族の負担が多くなるため、デイサービスの回数を増やすことが必要になります。ただ、デイから帰宅して以降は家族の介護が中心になるため、特に、高齢者の二人暮らしでは夜間の排泄など負担が大きくなり、ショートステイなど施設での夜間介護の利用も必要になってきます。それでも毎日利用出来るわけではないので、この段階でかなり心身共に疲弊する方が多く、どの様にご家族の負担を軽減できるか、現在の大きな問題と言えます。さらに症状が進むと自分では何も出来ない状態で、家族の負担では介護できない状況となり、施設への入所が検討されます。グループホームや、有料老人ホーム、特別養護老人ホームなどです。心情的に好まれない方も多いのですが、家族にとってもご本人にとっても好結果になることも多いようです。ただ、経済的なことや受け入れ先の定員など問題点も数多くあります。認知症は未だ治せる疾患ではないため、それぞれの症状に応じて、いかに家族の負担を軽減するかを考えながらケアしていくことが必要です。

・介護保険について(2010.02)

介護保険制度は、スタートして10年になりますが、まだ十分周知されていない部分も多い様です。私自身、開院当初から、介護審査会の審査員を務めて来たこともあり、今回はこの制度について少し書きたいと思います。まず、介護が必要となる方とは、例えば膝や腰が痛くなって買い物に行けない、家事にも困る様な方、脳卒中後遺症や認知症などで、常に家族の助けが必要になっている様な方です。介護サービスには、手すりを付けたり、電動ベッドを借りる事から、ヘルパーさんに来てもらって介護をしてもらったり、デイサービスなどで受ける施設サービスがあります。介護サービスを受けたい人は、自治体の介護申請窓口へ申請をする必要があります。申請をすれば、かかりつけ医は、主治医意見書を書き、自治体からは各家庭に認定調査員が派遣され、調査書が作成されます。これを元に、審査会が開かれ、要支援1から要介護5まで7段階の介護度が決定されます。介護度が決まれば、限度額(5万円弱にはじまり、一段階ごとに2倍、3倍になります)の範囲での介護サービスが一割負担で受けられます。中には介護申請をしても非該当になる方もおられます。このような方は、予防的な介護が必要であれば地域の包括支援センターに相談していただく方法もあります。また、65未満の方でも脳卒中後遺症や、若年性認知症など特定の疾患の方は介護サービスを受けられる場合があります。適応があるかどうかは認定課窓口に相談してみてください。介護保険制度はこの10年でかなり整備され充実した物になってきてはいますが、問題も多く、ことに、認知症の方を介護する家族の負担はまだまだ重く、その軽減が、今後の重要な課題と言えます。

・LDLコレステロールが高いと言われたら(2010.01)

高脂血症は、最近では総コレステロールの値は問題ではなく、その中に含まれる、LDLコレステロールの値が高いと、将来の脳卒中、心筋梗塞の危険度が高くなる事が知られています。特定健診と呼ばれる、一般に実施されている健康診断でも、総コレステロールの値ではなく、LDLとHDL(善玉)コレステロールの値が示されているはずです。これまで高脂血症と言われて、内服薬を服用していた方の中には、LDLコレステロールはそれほど高くない方もおられますので、治療の必要性をあるかあらためて検討する必要があります。逆に、それほどコレステロールの値が高くないと言われていた方でも、LDLコレステロールの値が高い方がおられますので、チェックが必要です。
普段の診療で、コレステロールが高いときにはどんな物を食べたらよいかということをよく尋ねられます。コレステロールを多く含むものとして、肉、卵黄、魚介類の卵(いくら、たらこなど)レバー、いか、ウナギ、バター、チョコレート、ドーナツなどが挙げられます。逆に下げる物としては、植物油(コーン油、オリーブ油など)、大豆、しいたけ・キノコ類、たまねぎ、ニラ、にんにく、魚介類、こんにゃく、ごま、酢などで、特に食物繊維は腸管でのコレステロールの吸収を抑制しますので、海藻類なども重要です。ただ、同じ食事をしていても、コレステロールが高い人もいれば低い人もいます、特に女性では閉経後はコレステロールが高くなる傾向にあり、食事だけで改善出来ない場合など、個人差があります。運動療法も併用し、それでも改善しない場合や、極端に値が高い場合などには薬での治療もご検討ください。
2009年度

・寒さと脳卒中(2009.12)

寒くなると脳卒中が多く発生し、冬は脳外科医が大忙しになる季節です。
これは気温の変化による血圧の上昇や体内の水分バランスに密接な関連があります。急に気温が下がると血圧が高くなり、脳出血が多くなるとされています。最近では降圧剤の進歩と降圧の重要性について一般によく知られるようになってきたため、以前に比べれば脳出血の発症率は低くなってきていますが、それでも冬場は他の季節より脳出血救急搬送が増えます。また、脳梗塞の発症も冬場は増えます。脳梗塞は水分摂取と関係が深いため、脱水になりやすい夏場にも多いのですが、冬場はむしろ水分を余りとらないことで、気づかないうちに脱水の傾向になることが多いようです。例えば、冬は寒いのでお風呂にゆっくりつかってる時間が長くなりがちです。自然と脱水の傾向になるのに加えて、入浴後ビールでもと思って飲酒し、その後水分をとらないとアルコールの利尿作用により脱水が進行し、脳梗塞になりやすくなります。また、かなり激しく運動したり、長距離を歩いたりしても、それほど喉が渇いたり汗をかかないため、水分補給が不足しがちになり、やはり脳梗塞を発症しやすくなります。夏に比べて冬は水分摂取に余り気を遣わないことが多いようですが、空気が特に乾燥している日などの運動時や、温泉にゆっくりつかって、そのあと一杯飲もうとする場合などは、いつにもまして、十分水分をとるようにしてください。また、このほか冬場の脳卒中を防ぐためには、急な気温の変化を避けるために、外出の際に暖かい室内から急に寒い戸外へ出ない、家の中でも室内と、廊下やトイレの気温差があまり大きくならないようにする、お風呂では、脱衣場も十分に暖めておくなどの配慮が必要です。

・TIA 一過性脳虚血発作(2009.11)

TIAとは、一時的に脳の血管が詰まることで、脳に血流の悪い部分が発生し、呂律が回りにくい、手や足に力が入りにくい等の症状を来すことを言います。TIAの多くは、頚動脈や主要な脳血管が細くなって詰まりかけていたり、心房細動などで、心臓に血栓が出来ている場合に起きやいのですが、完全に脳の血管が詰まってしまう脳梗塞とは異なり、血管が一旦詰まっても血栓がすぐに溶けて流れ、症状は一時的ですむことから、一過性の脳の虚血発作ということになります。TIAの症状は数分で済む場合もあれば、数時間続いて良くなることもありますが、脳梗塞の警告症状とも言われ、将来の、脳梗塞の発症に対して注意が必要な状態です。しかし、当クリニックへ受診される方の中には、明らかに以前にTIAと考えられる症状を来たしておられる方でも、「一過性でよかった」、「軽くてすんだ」などの理由で、医療機関を受診しても治療を受けておられなかったり、医療機関を受診すらされていない方もおられます。意外と一般的には、軽く見られている場合が多いのですが、最近の報告ではTIAを来たしてから20%以上の方が3ヶ月以内に脳梗塞を発症され、特に数日後には10%程度の方が脳梗塞を発症するとされています。高齢の方で麻痺の程度が強い、持続時間が長い、血圧が高い、糖尿病がある等の場合、脳梗塞を発症する確率が高くなります。このため最近では、明らかなTIAの症状で、危険度の高い方には、発症から数日以内であれば、詳しい検査と治療のために、入院加療が勧められます。発症から数日以上経過していても、脳梗塞予防のために抗血小板剤やコレステロール改善薬の内服が勧められます。

・目の症状と脳(2009.10)

物が二重に見える、視野の一部が欠けて見える、などは多くの場合、眼科的な疾患ですが、中には脳からの症状である場合があります。脳には、目を動かす3つの神経があり、いずれも脳幹から起こっており、眼球への通り道のどこかで腫瘍や動脈瘤の様な神経を圧迫する物があったり、脳梗塞などの血管障害などがあれば目の動きが悪くなり、物が二重に見えたり、かすんだりすることがあります。また、目で見た物の情報は、視神経を通って、脳の一番後方にある、後頭葉へ伝えられます。通り道のどこかに、脳梗塞や、腫瘍性病変などがあれば、視野の一部が欠けたりすることがあります。特徴的な症状としては、両目の視神経が合流する付近にある下垂体が、腫瘍性に大きくなって視神経を圧迫すると、両目の外側(耳側)視野が欠け、両耳側半盲と呼ばれる症状を来します。また、後頭葉に脳梗塞などの異常があると、同名半盲と呼ばれる、左右いずれかの視野が欠けた症状を来します。いずれも視野検査などをすれば典型的な症状でわかりやすいのですが、なかなか自覚症状としては気づきにくいもので、下垂体の腫瘍などは、気づいたときにはかなり大きくなっている場合がほとんどです。また、小さな脳梗塞などの場合は、気がつかないうちに、後日、大きな脳梗塞になって診断される場合もあります。視野が暗くなる症状で、一過性黒内障と呼ばれる状態がありますが、頸動脈が細くなっている場合に生じ、脳梗塞の前兆とも言える症状で、特に注意が必要です。わずかな症状で、眼科医で問題がないと言われるようなものであればそれほど神経質になる必要はありませんが、目の症状と脳には密接な関連があることを知っておいていただければと思います。

・物忘れ いろいろ(2009.09)

先日某新聞を見ていると、物忘れの症状が実はてんかん発作で、知らぬうちに見過ごされていることもよくある、と言うような記事が紹介されていました。この記事で「ああ、ひょっとして私の物忘れもてんかん発作では?」と思う方も多くおられるのではと思います。必ずこのような記事を出ると心配になって当院に相談に来られる方がおられます。一方で、物忘れイコール認知症と心配されて受診される方が多いのも事実で、この際、物忘れもいろいろ、ということを今回は知っていただきたいと思います。まず、当院へ物忘れが心配で受診されるほとんどの方は異常のない方です。頭部MRIでは萎縮性変化や血流の悪い部分が見られず、症状の進行などがなければ正常範囲と言えます。逆に、記銘力の低下が進行して、意欲がなくなったり、日付の感覚がなくなってくれば認知症と言え、MRIで萎縮性変化や血管障害などの異常が見られます。認知症以外の病的な物忘れとしては、脳梗塞や、脳腫瘍、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫など、画像検査をすれば確認でき、治療可能な疾患もあります。稀に、比較的短い時間の記憶が脱落する症状を繰り返すことが、ある種のてんかん発作の症状に見られます。当院でも何人かの方の治療をしていますが、一般には、普通の物忘れと混同する様なものではなく、そばにいる人が見れば、記憶をなくしていた時間帯の様子や行動がいつもと違うことに気づくはずです。問診である程度の診断がつきますが、てんかん発作にも血管障害や脳腫瘍などが原因となることもあり、画像診断は必要になります。人生いろいろ、物忘れもいろいろです。

・脳梗塞の予防薬(2009.08)

脳梗塞の予防には食事の節制や適度な運動が重要ですが、予防的に内服薬を服用していただく方もあります。脳梗塞を起こしたことがある方には予防薬は必ず必要になりますが、一度も脳梗塞を起こしていない方は予防薬は不要でしょうか?一般に、MRI検査で白質変性や、ラクナ梗塞と呼ばれる微小血管が詰まっている状態が多数見られる場合など、動脈硬化が進行している場合、予防薬が必要とされています。しかし、MRI検査の所見で、どの程度までは内服薬が不要で、どの程度なら内服薬が必要になるかの、きまりがあるわけではありません。薬は、服用することを好まない方や、そうでない方様々ですので、当院では、内服薬を服用してもらうかどうかは、ご本人と相談して決めることにしています。その場合、頸動脈エコーなどでの動脈硬化の進行の程度なども参考にすることになります。頚部血管の動脈硬化が強い場合にはEPAと呼ばれる、イワシの脂から抽出した薬剤を使用することもあれば、脳血管の傷みが強い場合には抗血小板剤作用を強く持つ内服薬が必要になります。様々な種類の抗血小板剤がありますが、共通して言えることは、血液が「さらさら」になり、血液が固まりにくくなることです。余り作用が強くては、鼻出血や、けがをした際には血が止まりにくくて困ることもあります。あくまで予防的な内服薬ですから、余り作用が強いのも考えものですから、場合によっては量を少なくして使用したり、やや作用の弱い内服薬を使用することになります。いずれにしても内服薬を服用するかは最終的にはご自身の判断で、運動や食事などの節制で十分適応出来る方は、内服薬なしで、定期的に検査をして経過ををみるのも良い方法かと思います。

・脳卒中になったら・・・(2009.07)

実際、脳卒中になってしまった時、どうすればいいでしょう。
「先生、、脳卒中になったらどうしたらええのん」ということはよく聞かれます。「動けん程やったら救急車呼んで、動けたら、うちへ来て、すぐ検査して、入院必要やったら病院紹介しますよ」と答えるのですが、さらに、「ここが休診や、夜中やったらどうすればいい」と聞かれます。「その時は救急車やな」と答えますが、ここから先が皆さん、さらに不安なようで、「救急車呼んだらどこへ行くかわからんし、どこへ行っても脳外科のお医者さんがいるとは限らんでしょ、特に夜中は」となります。ここまでで、私としても答えに窮してしまいます。まさに言われるとおりで、日中であれば、病院には脳神経外科や神経内科の医師がおられるため、いずれかの病院へ紹介できますが、夜間になると私自身「どこで見てもらえば・・・」となります。胸痛など心筋梗塞を疑うような場合も、脳卒中と同様、緊急に専門医に診てもらう必要がありますが、こちらの方は循環器内科のスタッフが充実していて夜間でも専門医が対応してくれる病院があり安心ですが、残念ながら市内には必ず脳外科の医師がいて、緊急に対応してくれる病院はありません。以前、私が勤務医をしていた大阪の病院であれば、脳外科医が必ず毎日当直し、救急患者さんを断るなどはあり得ない事でしたが、なぜか奈良ではその逆が当たり前のようになっています。少なくとも何処か一つの施設にでも脳神経外科医を集約して、脳卒中センターのような緊急医療が出来る体制が整えば、皆さんや私自身の不安もなくなるのですが、そんな日が来るか・・・。今できることは、やはり何とかならずに予防すること、でしょうか。

・脳ドックでわかること(2009.06)

よく、当クリニックを受診される方に、「脳ドックって何ですか?」と聞かれることがあります。
脳ドックとは簡単に言えば、脳の健康状態をチェックすることが主な目的で、頭部のMRIで脳の断層撮影をみて、異常がないかを確認することになります。脳の健康状態の主なチェック項目としては、無症候性脳梗塞と呼ばれるような、症状を来していないが知らないうちに脳血管が詰まっているところがないか、脳血管撮影で動脈瘤や脳の血管に細い部分がないか、脳全体が萎縮してきていないか、などがあります。また、最近では頚部血管が原因で脳梗塞になることも多く、頚部の血管に細い部分がないか、あるいは頸動脈エコーで、頚部血管の壁が傷んでいないかなどをチェックすることもあります。頸動脈エコーは動脈硬化の進行の程度の評価にもなります。さらに、脳ドックでは動脈硬化の評価として、CAVIと呼ばれる四肢の血圧や脈圧を測定する機器も用いられます。血液検査で糖尿病や高脂血症などの脳卒中危険因子がないかもチェックされます。最近では、VSRADと呼ばれる、記憶の中枢である脳実質中の、海馬周囲の萎縮の程度を測定する方法で、将来の認知症予防に役立てようという試みもあります。ここまで書いてきておわかりいただけるように、脳ドックのチェック項目はどんどん広がってきていると言えます。脳ドックは単に脳の状態を見るだけではなく、血管の状態や動脈硬化の進行度までわかることで、将来の脳卒中の予防に役立つものと言えます。

・手術件数と良い病院(2009.05)

病院のランキング本によれば、「良い病院」の基準は外科系では手術件数が多いことのようです。厚生労働省が、手術件数が少ない医療機関の診療報酬を減額して以来、手術件数が多い=「良い病院」として評価されるようになったようです。しかし、手術件数が多いと本当に「良い病院」と言えるのでしょうか。例えば、脳神経外科では、脳動脈瘤や脳腫瘍の手術件数が多い事が「良い病院」とされているようですが、本当にそうでしょうか?脳動脈瘤には、くも膜下出血を来した破裂脳動脈瘤と、たまたまMRIなどの検査で見つかった未破裂脳動脈瘤があり、脳腫瘍にも、症状を発症しているものもあれば、たまたま検査で見つかった無症候性脳腫瘍もあります。未破裂脳動脈瘤や無症候性脳腫瘍を治療すべきかは、慎重に適応を考えた上、手術をしないで経過を見ることも数多くあります。しかし、手術件数を増やそうとすれば、未破裂脳動脈瘤や、無症候性脳腫瘍の手術を、どんどん手術適応を広げて手術件数を増やせば、一見すると「良い病院」のように見えますし、病院の利益も上がります。果たしてこれが本当に「良い病院」でしょうか?しなくても良かったかもしれない手術を数多くする施設が「良い病院」であるはずはなく、本当に必要な手術を、最小限の適応で、最大限の安全性をもって治療する施設が患者さんにとって、本当に良い病院といえるはずです。手術件数でランク付けするマスコミにも大いに問題がありますが、くれぐれも、手術件数という単純な物差しではなく、手術適応や手術の結果どうなったかなど、より多くの見方で、良い病院を選んでいただければと思います。

・MRIとは(2009.04)

MRIとは、磁力を応用して、生体の内部情報を画像化する診断法です。MRIは放射線を利用するCTとは全く異なる検査法で、検査中放射線は出ません。身体のどこでも撮影することが出来ますが、心臓や胃、腸など、動いている場所の診断には不向きです。逆に、動きの少ない場所の診断は得意で、脳や脊髄の画像診断はCTより精細で画像情報が多く、脳神経外科領域の診断には欠かせないものになっています。特に最近のMRI撮影法の進歩はめざましく、例えば、くも膜下出血の診断は、これまでのMRIの撮影法では分かりづらく、CT検査をしていましたが、最近の“フレア”という撮影法であれば、わずかな出血や少し時間の経過した出血も検出でき、むしろCTより診断精度が高くなっています。さらに、造影剤を使用せずに血管撮影が出来るMRAの撮影技術も向上し、小さな動脈瘤も検出が可能になってきています。もう一つ、最近のMRI診断法の進歩に“拡散強調”があります。これまで、脳梗塞は、発症してから1日程度経過しないと、どこが脳梗塞になったか分かりませんでしたが、拡散強調という撮影法を使えば、非常に早い段階で脳梗塞の診断がつきます。当院の外来でも脳梗塞の検出率が格段に向上し、非常に早い段階で治療を開始することが可能になっています。このほか、MRIの撮影時間も以前に比較して非常に短くなり、必要最小限の検査であれば5〜6分程度で済みます。じっと動かずにいることが難しい、小さなお子さんでも検査が可能になってきています。このように、MRIの撮影技術の進歩は、日常の診療に非常に大きな恩恵をもたらしていると言えます。

・三叉神経痛の治療(2009.03)

三叉神経痛とは、顔の感覚神経である三叉神経が、何らかの原因で痛みを引き起こす疾患です。ほとんどの場合が特発性三叉神経痛とよばれ、三叉神経周囲の血管が硬くなって蛇行し、三叉神経を圧迫することで痛みを生じます。症状は額や頬、下顎の痛みです。当院へも、よく顔の痛みで三叉神経痛を心配されて受診されますが、副鼻腔炎(いわゆる蓄膿)や目の奥の痛みを伴う片頭痛などの場合も多く、鑑別が必要になります。症状を聞けばたいていの場合、三叉神経痛であるかは区別できます。三叉神経痛の特徴は、電気が走るような鋭い痛みが瞬間的に走ることで、洗顔や歯磨き、ひげそりなどで誘発され、物もかめないほどの痛みになることもあります。何分もの間や、一日中持続する様な痛みは三叉神経痛ではないと言えます。治療はカルバマゼピンと呼ばれる、薬剤が中心になります。一般的にこの薬剤で8割程度の方の痛みがコントロールできるといわれていますが、眠気やふらつきなど、副作用の点で継続できない場合や、薬剤が効果のない場合には他の治療法が考えられます。根治術としては手術的治療が勧められます。耳の後ろに五百円玉程度の穴を開けて、接触している神経と血管を離れさせる手術で、熟練医であれば9割以上が治ると言われています。手術を受けるのが怖い人や、高齢で危険性が高い場合にはガンマナイフなどの定位放射線治療があります。良くなる確率は高いようですが、しびれなどの副作用や、医療保険が適用されないなどの問題があります。
特発性三叉神経痛以外にも脳腫瘍や炎症などが原因で三叉神経痛を来す疾患もあり、それぞれ画像診断などで鑑別した上で、それぞれに適した治療法が必要になります。

・認知症の基礎知識(2009.02)

高齢化に伴い、身内の方などに、認知症の方が居られることも多く、認知症は決して珍しくなく、身近な疾患になってきています。比較的症状が軽い方から、重度の方まで認知症の症状も様々ですが、一つ言えることは、改善することがあまりなく、年々進行していくということです。その意味で、この疾患で最も重要なことは、早期に診断して、症状の進行を抑制することにあります。ただ、この早期に診断する事が最も難しく、当院へ受診された方でも、当初は問題がないと診断していても、数年後に明らかな認知症と診断できるような方も居られます。実際、家族の方が「おかしい」と思われても、医療機関を受診されるまでに7割の方が、2年以上かかっているといわれています。治せる疾患でないのなら早期に診断しても同じでは、と考えられる方も居られるようですが、早期に診断するメリットは、認知症と思っていても別な疾患で治せることもあること、生活習慣の改善や内服薬で症状の進行を遅らすことができること、早期に診断して症状の進行に合わせた介護計画などを立てておけること、などがあります。認知症の早期診断のポイントは、普段の生活状態の聞き取りが最も重要になります。物忘れの程度だけでは判断が付きにくく、その他、今まで出来ていたような家庭内のことができない、外出して場所が分からなくなることがある、そうじや片付けをしなくなった、など日常生活の中で「おやっ」と思うことが危険信号とも言えます。これら危険信号があれば、医療機関で行う認知症の簡易テストや、画像診断と併せて考えることで、早期診断に近づくことができます。

・血圧の測定(2009.01)

新年、おめでとうございます。今年でこの欄も8年目を迎え、新たな気持ちで、これからも様々な情報を読者の方に拙文ながら提供していきたいと思います。
今年は比較的暖かい冬のように思われますが、気温が下がると共に脳卒中の方が増える事はよく知られています。これは血圧が、気温の低下によって逆に上昇することが原因と言われています。一日や二日程度、急に血圧が上昇することで心配する必要はありませんが、日常的に血圧が上昇したり、極端に上昇する時間帯があれば要注意です。その意味で、最近では家庭での血圧測定が非常に重要視されています。よく、家庭で血圧を測定するにはいつ測定するか?何回測定するか?などの質問を受けます。基本的には日に二回、朝夕同じ時間帯に測定し、少なくとも1−2週間の測定で血圧変化の傾向を知ることが必要です。特に最近では早朝高血圧と脳卒中には関連があるとされ、朝方血圧が高い傾向にある人は注意が必要になります。朝の血圧測定は起床後1−2時間後まで、特に起床直後は上昇している事が多く、極端に高い方は30分程度して再測定してください。血圧は冷たい水での洗顔後や、飲食後、入浴後は変化しやすく、ストレスがかかった状態でも変化しますので、余裕のある時間帯で安静時に測定してください。血圧計には腕や手首で測定する物がありますが、上腕で測定する物をお勧めします。一度目の測定値が高い人でも数回測定すれば下がる方も居られますので、数回の測定で、ある程度安定した値を参考にしてください。医療機関で血圧が高い人でも、家庭で測定すれば正常な方(白衣高血圧)もかなり居られますので、ご自身の血圧はまず、家庭での血圧測定を習慣にしていただければと思います。
2008年度

・頸動脈プラーク(2008.12)

脳卒中は日本人の死亡原因の第3位ですが、寝たきりや介護が必要となる原因疾患の中で最も多い物です。脳卒中には血管が破綻する脳出血と、血管が詰まる脳梗塞に分けられますが、降圧剤の進歩と共に脳出血が減少している一方で、脳梗塞は食生活の欧米化と共に増加し、中でも頸動脈が原因となる脳梗塞が増えてきています。頸動脈は心臓から脳へ血流を送る非常に大事な血管で、動脈硬化が進行すると血管の壁が厚くなり、最終的には詰まってしまうこともあります。この動脈硬化が進行する過程で、頸動脈の壁の一部が盛り上がった状態を頸動脈プラークと呼びます。プラークは、頸動脈をエコー(超音波)で検査することによって確認出来ます。プラークは血管の壁の内側に、主に脂肪分が貯まってきた結果、盛り上がってくるもので、比較的柔らかい物から硬い物まで様々な状態で見られます。小さなプラークはある程度年齢が進めば動脈硬化の進行と共に出てくる物で、それほど心配はありませんが、ある程度厚みが増してくれば、血流を良くする内服薬での治療が必要になり、血管の50%以上を占めるようになると将来の脳梗塞の危険性が高くなりため、手術によってプラークを切除したり、血管の中からカテーテルを用いてプラークを平らにする治療が必要になります。比較的薄いプラークでも、壁が薄くて破綻しやすい部分があれば、そこで血栓が形成され、出来た血栓が壁からはがれ落ちて、血流に流されて、脳の血管を詰まらせてしまうこともあります。糖尿病の方や、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の高い方はプラークを形成していることが多く、一度頚部エコーなどのチェックをしておく必要があります。

・閃輝性暗点(2008.11)

脳神経外科と眼科では関連する疾患が多く、中でも閃性輝暗点と呼ばれる視野障害は当院へも眼科の先生からよく検査を依頼される疾患です。およそ30歳代までの若い女性で、この現象に続いて拍動性の強い頭痛が起これば、片頭痛の前兆としての視野障害です。これは一般的にもよく知られており、心配される方もあまり無いようなのですが、比較的高齢の方にこの現象が起きた場合は、その後に頭痛が続くことはなく、視野障害だけを生じることから、非常に不安を感じて眼科へ行かれることが多いようです。症状は、視野の一部に「白いキラキラした点が現れる」、「視界の一部がゆらゆら動きだし、水中のように物がゆがんで見える」、「ギザギザした波や、ノコギリのふちのようなもの、稲妻のような光が見える」などで、大体30分ぐらいで自然と消えます。原因が「よくわかっている」とまではいえないのですが、眼底や眼球には異常はなく、いずれの目で見ても視野の一部に同様な物が見えることから、脳の後頭葉へ分布する血管に何らかの原因で痙攣の様な状態が起こり、視野障害を生じると考えられています。いくら症状を繰り返しても一過性で、閃輝性暗点そのものは、大事には至らない事が殆どですが、やはり視野に異常を来した場合は脳卒中が最も心配になります。一般に、血管が詰まったり、出血した際の視野障害は視野の一部が暗く欠けるのに対して、閃輝性暗点の場合、暗くはならないという点が、症状から見分ける一つの目安になりますが、症状だけからでは脳血管障害との鑑別が困難な事も多く、症状を来した際には一度はMRIなどの検査を受けておくことが必要です。

・高脂血症の基礎知識(2008.10)

我々、ヒトの身体の中には脂肪分が沢山含まれます。なかでも、コレステロールや中性脂肪は身体を構成するのに欠かせない物ですが、過剰になると様々な弊害を来します。脂肪分が身体の中にたまりすぎた状態を高脂血症とよびます。コレステロールの中でも悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールは主に血管の壁の中にたまり、血管の壁をどんどん硬くすることにより動脈硬化を進行させます。中性脂肪は主に内臓の周囲に蓄積し、善玉コレステロールである、HDLコレステロールを減少させる作用があるため、相対的に悪玉コレステロールが増えることにより血管に悪影響を及ぼします。また中性脂肪が高い方は、甘い物のとりすぎや、飲酒量する方に多く、肥満など、生活習慣病の危険因子を持っていることが多いようです。
動脈硬化が進行すると、脳梗塞、心筋梗塞などの怖い病気を発症するようになり、最近盛んに高脂血症の予防や治療が話題になっているのもこのためです。これまでの基本健診から今年からは特定機能健診に変わりましたが、検査項目はかなり絞られたもので、血液検査も最小限のものになっていますが、唯一増えた項目がLDLコレステロールの項目です。
今までの総コレステロールの数値では善玉コレステロールが高いだけで、問題が無い方でも治療の対象にされていましたが、今では治療の対象はLDLコレステロールが高い方となっています。
高脂血症の治療は運動、食事、薬物の3本柱ですが、食事は動物性の脂肪分を控えて、中性脂肪が高い方は甘い物や飲酒を控えてください。運動は何でも良いのですが、出来るだけ継続することが必要で、その意味では日に30分以上のウオーキングが身近なもので推奨されます。薬物療法については必要に応じてかかりつけ医にご相談ください。

・高血圧の基礎知識(2008.09)

高血圧は、日常生活の中で最も身近な疾病のうちの一つといえます。高血圧が身体に良くないことは皆さん御存知ですが、「どの程度で高血圧か」「なぜ身体に悪いか」、など、基本的な部分での理解が得られていない場合があります。また、「降圧剤は一生服用しないといけないから服用しない」などと誤った理解をされている場合も多いようです。血圧の正常範囲は収縮期が140、拡張期が90までとされ、以後、収縮期は20,拡張期は10上昇するごとに軽症、中等症、重症高血圧に分類されます。収縮期血圧とは心臓が全身に血液を送り出すための血圧、拡張期血圧は収縮した血管がゆるんで休んでいるときの血圧で、血圧が高ければ、心臓や血管に負担をかける結果、血管が硬くなり動脈硬化を助長することになります。動脈硬化が進行すると血液の流れが悪くなり、脳卒中、心筋梗塞など様々な血管疾患を引き起こすことになります。つまり、高血圧の治療の目的はひとえに動脈硬化と、将来の脳卒中、心筋梗塞を予防することにあると言えます。治療は、運動と食餌療法が優先されます。日に30分以上の散歩や、塩分控えめ(日に6g以下:かなり薄味です)な食事でも改善されない場合、降圧剤による薬物療法になります。降圧剤は開始したとしても、運動や食餌療法のさらなる努力で改善すれば、いつでも減量したり中止したり出来ます。なかなか節制出来ないために、結果的に内服薬での治療を継続する方が多くはなりますが、決して一度始めたら止められないような怖い薬ではありません。高血圧の治療は、単に数値が下がれば良いというわけではなく、生活習慣の改善を伴ってはじめて安定した血圧が得られ、将来の脳卒中、心筋梗塞などの予防につながることを十分ご理解ください。

・鎮痛剤乱用頭痛(2008.08)

「乱用頭痛」と書けばなにやら怖いように思われますが、鎮痛剤を毎日の様に服用するほどの「頭痛持ち」の方は身近にもおられると思います。このような方に鎮痛剤乱用性頭痛の可能性が考えられます。最近、問題になるのが、片頭痛の方で、トリプタン系と呼ばれる比較的新しい片頭痛の治療薬の乱用による物があります。片頭痛の方であればおわかりのように、頭痛発作は寝込むこともあり、内服薬に頼りたい気持ちが強くなります。結果、頭痛の頻度が多い方や、実際にはそれほど頭痛が強くない方でも、内服薬を服用する機会が多くなり、月のうち半分以上も治療薬を服用する方がでてきます。この状態を繰り返すと、頭痛の頻度が増え、連日、頭痛が出現し、慢性連日性頭痛などと呼ばれる状態になります。当初は月に数回の頭痛発作が、毎日の様に続き、内服薬の頻度も増え、悪循環に陥ることになります。実は鎮痛剤乱用性頭痛は、トリプタン系に特有な物ではなく、最もこの状態を起こす原因として多い薬剤は、使用頻度が多い、市販の鎮痛剤(バファリン、イブ、ナロンエースなど)とされています。当院でも受診される患者さんの多くに、毎日のように頭痛がして鎮痛剤を服用する、あるいは市販薬を服用する頻度が多くなり、最近はそれも効かない、などの方がおられます。このような方は画像検査で問題がなければ、鎮痛剤乱用性頭痛の可能性も考えられます。多くの場合、鎮痛剤の服用を中止あるいは減量し、他の薬剤などと併せて加療することで、鎮痛剤乱用性頭痛は良くなるとされています。鎮痛剤服用回数が多いと思われる方は、「頭痛ダイアリー」などを書くことで、ご自身の鎮痛剤服用状態を確認し、専門医に早めに相談してください。

・当院での脳梗塞の予防(2008.07)

当院へ受診される多くの方の不安は「自分が将来脳梗塞にならないか」であり、当院での診療のかなりの部分は「脳梗塞の予防」ということになります。「脳梗塞を予防するにはどうすればいいか?」どんな疾患でも100%予防できる方法はありませんが、脳梗塞は高血圧、高脂血症、糖尿病の生活習慣病が危険因子となりますから、当然これら疾患がある方は運動療法、食餌療法に加え必要であれば薬物治療をし、これら生活習慣病を治療することが脳梗塞の予防になります。しかし、同じ生活習慣病の方の中でも、個々に脳梗塞の危険性は異なります。高血圧や高脂血症の方でも年齢や数値の度合いによって動脈硬化の程度が異なってくるからです。当院ではまずこの動脈硬化の程度を見るために、頸動脈エコーで血管壁の厚みや、プラークと呼ばれる、傷んだ血管の隆起の有無を確認します。また四肢の血圧測定器で脈波伝搬速度を測定し、動脈硬化の程度が年齢相応か確認します。さらに頭部MRIで無症候性脳梗塞と呼ばれる、血流の悪い部分や、小さい範囲であっても完全に血管が詰まっているような部分がないか確認します。またMRIによる脳血管撮影で、血管に細い部分がないかも評価します。無症候性脳梗塞の有無によって脳梗塞の危険性が10倍程度になるとの報告もありますから、頭部検査の結果は非常に重要なものになります。これら検査などで危険性が高いと判断されれば、血液を固まりにくくする作用のある、内服薬(抗血小板剤)が予防的治療の中心になります。抗血小板剤には最近では様々な物があり、程度などによって使い分けることとしています。もちろん運動療法や食餌療法も欠かせない予防法になります。

・片頭痛の治療薬(2008.06)

片頭痛は、女性に多く、血管が拍動するような、ズキンズキンとした痛みが中心で、嘔吐や、目の前に星のような物がとんだり、視野が狭くなったりするような前兆が現れる場合もあります。
基本的には、くも膜下出血や脳腫瘍などの頭蓋内疾患を除外した上で、症状の起こり方などによって診断します。片頭痛の原因については、セロトニンと呼ばれる物質が関わっていることは確かなようですが、十分には分かっていないため、二度と頭痛が再発しないようにする治療はなく、頭痛が起きたり、起こりそうなときに薬剤で症状を軽減させる、対処療法に限られます。
治療薬の理想は、素早く効いて、何度も服用せず、副作用がなくて安価な物、ということになりますが、これらすべを満たす物は今のところなく、状況に応じた使い分けが必要になります。良く効くという点ではトリプタンが勧められますが、比較的高価な薬剤で、一般的な鎮痛剤が効く場合にはまずそちらが勧められます。どの薬剤も効果がある人には30分程度で改善しますが、症状が急激に強くなる方には、より体内に早く吸収されるためにトリプタン系薬剤では点鼻薬や自己注射薬などが現在では開発されています。ただ自己注射薬は内服薬よりもさらに高価で、使用法を十分理解して使用する必要があるため、救急病院を受診するほどに頭痛が重症化するような方に限られます。いずれの薬剤も使いすぎると「鎮痛剤誘発性頭痛」と呼ばれる、副作用が出ることがあり、トリプタン系であれば月に10日まで、一般的な鎮痛剤でも月に15日程度までに使用を制限すべきとされています。いずれにしても通常の鎮痛剤で治療困難な頭痛でお悩みの方は専門医を受診していただければと思います。

・めまい(2008.05)

平衡感覚は、耳の奥にある三半規管と、耳石器と呼ばれる感覚器から、前庭神経を通じて脳幹や小脳へと伝えられます。これらの経路のうち、いずれかが障害されるとめまいが起きます。めまいには回転性めまいと、浮動性めまいがあります。前者は天井が回るような感じで吐き気を伴うことが多く、後者は地に足がつかない様なふわふわした感じのするめまいです。日常の診療の中では回転性のめまいが多く、浮動性めまいは少ないのですが、浮動性めまいの方が原因としては深刻なものになることが多いようです。
回転性めまいの原因は、三半規管や耳石器にあり、リンパ液が増加しておきるメニエル病や、耳石がはがれ落ちてリンパ液流が乱れ、頭を動かす度にめまいが起きる頭位めまい症などが引き起こされます。いずれも薬物療法で治療されますが、頭位を変えることにより、はがれ落ちた耳石を元に戻す治療法もあります。前庭神経に炎症が起こっても回転性めまいを来すことがあり、この場合かなり激しい回転性めまいがおこり、その後しばらくふわふわした感じが続くことが多く、風邪をひいたあとなどに見られます。回転性めまいに対して浮動性めまいは、吐き気を伴うことは少なく、寝込む程ではありませんが、小脳や脳幹などの脳梗塞が原因のことがあり、注意が必要です。小脳などに障害が起きると、まっすぐ歩くことが出来ず、歩幅が広くなり、時には回転性のめまいも伴います。
日常生活のなかで、回転性めまいが起きた場合、自然に良くなることが多く、ほとんどの場合心配はありませんが、症状が長く続いたり、立ち上がりや、歩く際のふらつきが強く、浮動性のめまいの際には早めに受診し脳梗塞などの異常がないか、まず調べることが必要です。

・睡眠時の頭痛(2008.04)

よく当院の外来には、「頭痛で目が覚めた」、「目が覚めるとすごく強い頭痛がした」ということで受診される方がおられます。睡眠中の頭痛は、目が覚めるほどの痛みという点から、かなり不安に思うことが多く、実際、日常診療でも、非常に心配されて受診される方が多いようです。全体的な頭痛の患者さんの中では、睡眠中の頭痛はあまり多くはないのですが、一般的には広く知られており、国際頭痛分類には睡眠時頭痛(目覚まし時計頭痛ともよばれていた)として記載されています。多くの場合、心配のない頭痛に分類されているようです。原因としては肩こりなどが強く、睡眠中の姿勢などによっては、肩こり症状が強くなり、起床時には緊張性頭痛となって目が覚めることになります。緊張性頭痛とは、以前この欄でも書きましたが、主に頚部から後頭部の筋肉の緊張が強くなり、後頭部から頭部全体に鈍痛やしめ付けられる様に痛む頭痛のことです。その意味では、目が覚めるほどの痛みであったとしても深刻な頭痛の可能性は少ないのですが、ただ、やはり診療する側としても、目が覚めるほどの頭痛といわれれば、くも膜下出血などの脳卒中が起きたのではないかとかなり心配になるものです。常にMRIなどで検査をし、脳卒中でないことを確認しておかないと診る方としても不安な場合がしばしばあります。ちなみに脳卒中はいつ起きるかという研究もされており、それによるとくも膜下出血や脳内出血は、日中の血圧が上昇しやすい時間帯に多く、血圧が最も低くなる睡眠中は最も起こりにくいとされています。

・慢性硬膜下血腫(2008.03)

慢性硬膜下血腫については以前(5年以上前)この欄で書きましたが、高齢化が進むにつれて最近増えてきているといわれ、当院でも既に40人以上の方に手術治療が必要と診断し、治療していただいた方がおられます。頭部打撲で受診された中高年以上の方には「3−4週間して頭痛や、ふらつきなどがあれば必ず受診してください」と説明するほど、日常的に遭遇する疾患です。原因は脳と硬膜をつなぐ血管が傷み、徐々に出血し血腫が貯留するとされています。軽微な頭部打撲(覚えていないほど)が誘因になることが多く、外傷の既往がはっきりしない場合もみられます。大酒家の男性に多いとされますが、これは飲酒量が多いと脳の萎縮を来すためといわれ、その意味では大酒家の男性でなくとも萎縮性変化のある方は危険性が高くなるといえます。症状は、頭痛、歩行障害のほか認知症症状も多く見られます。高齢の方では認知症症状だけで発症する場合もあり、比較的急に記銘力障害や意欲低下などが進んだ場合には慢性硬膜下血腫を疑う必要があります。診断は頭部CTやMRIなどの画像診断で容易に診断できます。治療は、局所麻酔下に数センチの直線状の皮膚切開に加え、10円玉程度の大きさの穴を頭蓋骨に開けます。硬膜を切開して中にたまった血腫を洗浄して数日間頭蓋内にチューブを留置し、血腫がなくなれば治癒ということになります。脳の萎縮が強い方は再度血腫がたまることがあり、再発の頻度も10%程度はみられます。慢性硬膜下血腫は治せる疾患ですが、診断が遅れれば生命に関わる可能性もあり、高齢者の頭部打撲の際には十分注意していただくことが必要です。

・ブレインアタック 超急性期診断(2008.02)

“ブレインアタック”という言葉は、心筋梗塞など、急性心臓病を“ハートアタック”と呼ぶのに対して、脳卒中をブレインアタックと呼んで、より早期診断と治療を呼びかけるため、最近盛んに使われるようになってきました。ブレインアタック(脳卒中)の早期診断がこれまで以上に重要になってきた理由として、脳梗塞の治療に、発症から3時間以内であればt-PAという血栓溶解剤が使用出来ることになったことや、くも膜下出血の早期治療が大きな要因になっています。発症から診断するまで、”超急性期“の診断の手がかりとしては症状が重要ですが、頭痛や、めまい、などごくありふれた日常的な症状だけで発症することもしばしばで、この中から重症のブレインアタックを見分けるにはやはり画像診断が必要になります。ただ、脳梗塞はCTでは24時間以上、通常撮影のMRIでは6時間以上、梗塞巣が診断できるまでに時間を要します。このため最近では拡散強調と呼ばれる特殊な撮影法が使用されます。この撮影法であれば通常、3時間以内での超急性期診断が可能で、診断後すぐにt-PAを使用できる可能性がでてきます。また、くも膜下出血の診断では、CT検査が第一に行われますが、少量の出血や、発症して数日経過した場合、CTでは診断が困難なことがあり、この場合はCTよりもMRIでのフレア撮影という検査法が有用になります。またMRIでは同時に血管撮影が行え、動脈瘤があればより確実な診断が可能になります。これら検査法を当院でも用いることで、超急性期の脳卒中の診断をより確実にし、地域の救急医療に少しでも貢献できればと考えています。

・レビー小体型認知症(2008.01)

認知症は、アルツハイマー型や脳血管性が原因の多くを占めますが、これらに次いで多いのが、一般的には聞き慣れないかとは思いますが、レビー小体型認知症です。アルツハイマー型と同様、記憶障害が進行しますが、発症の初期から幻視や幻覚などの症状が特徴的な疾患です。幻視とは、「そこに子供が遊びに来ている」、「いま、そこにいた人が帰った」など、かなり具体的で、周囲の人が否定しても納得しない様な、視覚性の認知障害です。初期には幻視症状が目立ち、記銘力障害に気づかれずに進行することもあります。また、パーキンソン症状を伴うことが多いのもこの疾患の特徴です。元々、レビー小体とは、パーキンソン病患者の神経細胞内に見られていた異常構造物ですが、レビー小体型認知症では脳の広い範囲でレビー小体が見られ、パーキンソン病の類縁疾患とも考えられています。症状には変動があり、日によって頭がはっきりしていたり、ぼんやりする日が見られます。アルツハイマー型と違って、パーキンソン症状を伴うことから、転倒などに対する注意も必要で、介護などの必要性も高くなってきます。治療は他の認知症と同様、特効薬があるわけではありませんが、パーキンソン症状には抗パーキンソン剤が、幻視などには向精神薬が用いられますが、内服薬で逆に症状の悪化が見られることもあり、慎重な治療が必要になります。また幻視には漢方薬の有効性も報告されています。診断と治療については専門医の受診が必要です。
脳と神経に関する知識を、少しでもわかりやすくお伝えすることを心がけて、この欄も今年で7年目を迎えます。今年もよろしくお願いいたします。
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