脳神経ファイル
診療時間
時間/曜日
9:00−12:00
14:00−16:00
リハビリ/検査
17:00−20:00
※○は診察、△は検査およびリハビリのみ、
 −は休診です。
※土曜日は、9:00−13:00まで診療致します。
※休診日 木・日/祝日
※脳ドックは、随時受け付け致します。
診療科目
脳神経外科(MRI/CT検査)
内科・脊椎外科・リハビリテーション科
かづきクリニック
かづきクリニック
〒630-8115
奈良市大宮町5丁目1-10-1
TEL:0742-32-3201
※駐車場あります(20台)
クリニック前駐車場(3台)、第二駐車場(14台)
当院西隣の伏見駐車場の1番、2番、3番が使用できます。
駐車場位置については、受付でご確認ください。
ここでは毎月一回、マイタウン奈良に掲載されている輝いて生きるために/脳神経ファイルを紹介させていただきます。
脳と神経に関する病気や症状について少しでも知っていただくことで、無用な心配をせずにすむように、また必要な診療を受けていただけることの一助になればと思います。
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2004年度

・熱中症(2004.08)

今年の夏の暑さは非常に厳しく、体調管理に苦労されている方も多いとおもいます。前回この欄でも書きました脳梗塞も増えている様ですが、今年は特に熱中症の発症が多く、まだまだ暑い日が続く中注意が必要です。
熱中症とは炎天下でのスポーツや労働、温度や湿度の高い屋内での脱水などによる体温調節障害による体調不良で、熱射病、熱痙攣、熱疲労の総称とされています。症状は、軽度の脱水による血圧低下に伴い、めまい感や倦怠感、頭痛、吐き気などの軽症のものから、痙攣、過呼吸、意識障害などの重症なものにいたるまで様々ですが、いずれも放置すれば生命に関わる場合もあります。炎天下での激しいスポーツや作業中に多いと思われがちですが、熱中症患者の半数以上は屋内での発症で、そのほとんどは60才以上の高齢の方といわれています。高齢になると体温調節機能が低下していたりするために、のどの乾きに対する感覚が鈍り、日中活動している際、十分な水分補給がされずに熱中症にいたることが多くなると考えられています。
また、25度以上の熱帯夜が続くと、夜間寝ている間に発症することも多くなる様です。予防には水分摂取が何よりですが、のどが乾く前、少し口の中の湿り気が少なくなってきた時点で水分をとることが重要です。ふつうの水ばかりよりはお茶やスポーツドリンクなどの方が良いとされています。
応急処置はまず安静にすることと体温を下げること、水分を補給することですが、症状が軽快しない場合や意識障害、痙攣など伴う場合は医療機関を受診して下さい。まだまだ暑い日が続きます。どなた様も御自愛ください。

・下垂体腺腫(2004.06)

下垂体は脳底部にあり、周囲をトルコ鞍と呼ばれる頭葢底の骨にかこまれ上方には視神経が通っています。下垂体の役割は成長ホルモンや、性腺機能のホルモン、甲状腺ホルモンなどの分泌を調節することですが、いったん下垂体が腫瘍性に大きくなると下垂体腺腫とよばれ、これらそれぞれのホルモン機能が失われたり、過剰に分泌されることで様々な症状を来します。
一般的に下垂体腺腫は良性で予後も良いのですが、其の症状から、脳神経外科以外の領域で見つけられることが多い様です。
例えば下垂体腺腫が非常に大きくなれば、その上方にある視神経を圧迫し、右目も左目も視野のの外側がかけて見える、両耳側半盲と呼ばれる特徴的な症状を来します。歩行していてよく人とぶつかる、あるいは車を運転していて左右のドアミラーが見えにくいなどで気付く方もいる様ですが一般的には最近目がかすむなどにより眼科を受診し視野検査で異常が分かります。またプロラクチンとよばれる、性腺機能のホルモン分泌の異常により月経がなくなった、あるいは妊娠していないのに、乳汁分泌するようになった。などの症状で婦人科で下垂体の異常が指摘されることが多い様です。
この他成長ホルモンの分泌過多により四肢の末端が肥大し、靴がはけないようになったなどの症状も特徴的です。比較的典型的な症状があれば最終的には脳神経外科でMRIなどの画像診断により容易に診断はつきますが、非常に小さい微少腺腫とよばれるようなものの場合は、経過を見てはじめて診断がつく場合もあります。治療は大きくなった腫瘍で視神経を圧迫しているもの、成長ホルモンや甲状腺ホルモンを過剰に分泌しているものは手術により摘出する必要がありますが、プロラクチンを分泌していて大きくないものは最近では薬物治療が優先されます。いずれにしても良性腫瘍とは言え、できるだけ早期に、大きくならない内に治療を始められることが、治癒には重要と言えます。

・片側顔面痙攣(2004.05)

顔面痙攣は、治療できる疾患とは知らずに諦めて放置されている方もあり、多少の知識をお持ちいただければよいかと思います。
初期の症状は片側の下眼瞼の痙攣で始まります。眼瞼がピクピクするといった症状は、疲れた時などに、どなたでも一度くらいは経験されたことがあると思います。確かに、初期の段階では区別 がつけられない場合もあるのですが、問題のない場合は数日から数週間程度で症状が消失し、悪化することがないのに対し、顔面 痙攣の場合はかなり頻繁に下眼瞼が痙攣しやがて目の周囲から頬、口角の周囲まで引きつれるような筋肉の収縮が生じます。
人前に出たり、緊張したりした時などに強く起きるようになり、やがて目があいていられなくなる程になり、痛みなどはないのですが、人前に出るのが辛くなるなどの、精神的な苦痛を伴うようになります。女性に多く、顔面 神経を周囲の血管が圧迫することが原因のほとんどですが、脳腫瘍や血管奇形なども原因となることがあり、診断にはCTやMRIなどによる画像診断が必要となります。治療には内服薬は無効な場合が多く、神経内科や眼科などでよく実施されているボツリヌス菌毒素の顔面筋への注射療法と、脳外科手術による根治治療のいずれかとなります。顔面痙攣でいきなり脳外科手術を希望される方は少なく、ボツリヌス菌毒素による治療がまず試されますが、数カ月から半年程度で作用がなくなり、くり返し処置をする必要があります。頻繁に注射が必要な方や、十分な治療効果 が得られない方には手術が勧められます。手術は、神経を圧迫している血管を神経から剥がして再度圧迫しないように別 のところへ固定をする手術で、十分経験のある術者であればそれ程危険が高いものではなく、脳外科医としての経験からすれば、症状の強い方は治療の第一選択としてもよいと思います。診断や治療でお悩みの方は神経内科や脳外科の専門医に相談してみて下さい。

・脳ドック(2004.04)

近年までドックといえば人間ドックのことを示していたように、これまでの健康診断といえば、癌や心臓病などのような、脳以外の臓器にたいする健康チェックが主要なもので、現在でも基本検診など一般 的な健康診断で脳の健康チェックまですることはほとんどないといえます。しかし癌の早期発見などと同様に、これまでにもこの欄で何度も書いてきましたように、脳梗塞やくも膜下出血などの脳卒中は、一旦症状を発してからではすでに遅く、できる限りの予防が最も重要と言え、無症候性脳梗塞や未破裂脳動脈瘤などが見つかれば、その時点から将来の脳卒中に向けての対策が必要となります。ただ、ほんの10年前までには、これら症状を発していない状態での脳の変化を知る手段がまだ一般 的ではなく、脳の健康診断的なものはできないとされていました。私の知る限り、はじめて脳ドックとして脳の健康診断をはじめた病院では、カテーテル検査による脳血管撮影を実施し、動脈瘤などの発見に努めていましたが、やはり体に対する負担や低いながらも危険性があり、あまり勧められるものではありませんでした。近年MRI検査による無症候性脳梗塞の検出と、脳の血管撮影であるMRAの撮影技術の進歩により、未破裂脳動脈瘤が診断できるようになり、かつては日本人の死因の第一位 をしめていた脳卒中の発症前の予防が可能になってきたと言えます。脳ドックは何を目的にしているのですかという質問を良く受けますが、簡潔にいえば、脳卒中の中でも5割以上を占める脳硬塞の予備軍である無症候性脳梗塞の検出と、1割以上を占める、くも膜下出血の原因となる未破裂脳動脈瘤の診断にあると言えます。

・脳塞栓(2004.03)

以前にもこの欄で触れたかとは思いますが、脳硬塞には大きくわけて脳血栓と脳塞栓にわけられます。脳血栓は動脈硬化が進行し徐々に血管が傷みやがて傷んだ血管の壁に血栓が形成されてその場で血管が塞がる状態です。これに体してのう塞栓は心臓で形成された血栓が、大血管を経由して脳血管に流れてゆくことで血栓が形成された場所とは離れたところの血管を塞ぐことになります。脳血栓は細動脈硬化症といわれるように比較的細い血管で脳硬塞を来しやすくそのため脳血流の低下が少ない場合が多く意識状態が悪くなることは余りないのに体して、脳塞栓は比較的太い脳の血管を塞ぐことで、発症時から意識障害を伴うことがしばしば見られます。また症状も虚血範囲が広くなることが多いために重症となることが多く、優位 半球(右利きの人は左半球)の梗塞であれば失語症などが右の上下肢の運動麻痺とともに出現します。脳塞栓の原因の多くは心滂細動と呼ばれる不整脈が原因となります。心房細動は左心房とよばれる心臓の部屋の動きが悪く、その中で血流が滞りやすくなります。このため血液が固まりやすくなり血栓が形成されることになります。

・頸動脈狭窄症(2004.02)

脳と心臓を結ぶ血管は主に4本あり、もっとも多くの血液を運ぶ血管が、左右の頸動脈です。頸動脈は顎の高さで分岐しますが、 この分岐部は動脈硬化が生じやすく、内腔が狭くなると頸動脈狭窄症の状態になります。日本人には少ない病態とされてきましたが、近年、食の欧米化に伴い高脂血症や糖尿病などの動脈硬化の危険因子を有する方が増え、この疾患も増加してきています。狭窄部分は、進行するとやがて閉塞し、脳へ血流が送れなくなり、脳梗塞になります。他の脳血管からのバイパスが発達していれば症状を出さない場合もありますが、バイパスがない場合には急激な梗塞が進行することで、意識障害や生命に関わる危険性を来します。通 常、閉塞に至までには様々な危険信号を発することがあります。狭窄部分では血液が固まりやすく、血栓とよばれる小さな血液の固まりが動脈の壁にこびりつきます。剥がれて脳の方へ流されて大切な脳血管を塞いでしまうこともあります。血栓が溶ければ症状は一過性で、そのまま塞がってしまうと脳梗塞なります。片方の目が急に暗くなって見えにくい、言葉が急に喋りにくくなる、急に手や足に力が入りにくい、痺れる、などの症状は、ごくわずかの時間であっても血栓による一過性の脳虚血発作が疑われます。診断はMRIによる頸動脈撮影や、頸動脈エコーが有用です。最終的に頸動脈狭窄症と診断されれば、まずは内科的な内服薬での治療となりますが、お薬を服用していても症状を来す場合や、ある一定の以上の狭窄があれば、外科的手術や血管内手術の適応となります。外科的に狭窄して分厚くなった部分を剥ぎ取る手術が一般 的ですが、近年はカテーテル技術の進歩により、血管内から狭窄部分を広げる方法もあります。いずれの方法で治療するにしても、経験豊富な施設で治療されることが望ましいと思います。

・インフルエンザ脳症(2004.01)

今年もインフルエンザの流行期に入りました。今シーズンはSAAS 問題もあり、多くの方が予防接種を受けられた様です。インフルエンザは急な悪寒と発熱、関節痛などを中心としたウイルス感染症ですが、近年、高齢者の肺炎の合併症とともに問題になっているのが、小児に発症するインフルエンザ脳症です。インフルエンザ脳症は6歳以下に多く、毎年数百人が罹患し、死亡率が30%に達するといわれます。発熱から発症するまで1-2日と短かく、症状は高熱に伴う意識障害や痙攣ですが、通 常の発熱でもぼんやりしたり、異常行動が出たり、痙攣を来すことはあるため、診断が難しいこともあります。呼びかけても、痛み刺激をしても反応が鈍い場合や、痙攣が長時間つづいたり、何度もくり返す場合にはインフルエンザ脳症を疑う必要があります。欧米ではほとんど発症せず、我が国での報告例がおおいことから、発症原因としてある種の解熱剤との関連が指摘されています。現在はジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)やメフェナム酸(ポンタールなど)はインフルエンザの際の解熱剤には使用されなくなりました。一般 家庭でもふだん鎮痛剤などに使用することが多い薬剤ですので、御注意ください。発熱は感染症と戦う生体の反応の一部であり無理に下げる必要はありません。39度以上の発熱で、元気がなく、ぐったりしていれば解熱剤(アセトアミノフェン)で緩和しますが、それ以外は氷枕などを頭、首、脇の下などにあててください。最近インフルエンザの診断や治療には迅速診断キットやタミフルなどが有効に使用されていますが、脳症の診断は臨床症状と画像診断が中心で、特効薬はありません。点滴や呼吸管理が一般 的な治療となります。いずれにしても疑うような症状があれば、すぐに十分な対応ができる救急体制のある病院を受診して下さい。
2003年度

・コレステロールが高いといわれたら(2003.12)

毎年の基本検診の血液検査や血圧測定で、はじめて健康の異常に気付かれる方も多いと思います。中でも高コレステロールを指摘される方は非常に多く、今回は当院での高コレステロール血症の治療方針について書きます。数回の検査で常に高値を示してはじめて高コレステロール血症と診断しますが、一度だけ高い値を示した場合は1-2ヶ月後の再検査をすすめます。コレステロールの基準値は通 常220までとされていますが、高血圧など他に動脈硬化の危険因子のない場合240までは許容範囲とし、原則として経過観察としています。また画像診断や動脈硬化検査なども治療の参考となります。常に250をこえるような方には食事療法や運動療法をすすめることとしますが、コレステロールが高いからといって偏った食事をされている方は少なく、特に女性の場合、ホルモン産生や代謝が年令とともに低下し、体内で産生されたコレステロールが余って高くなる場合が多く、食事に神経質になるとかえってバランスが悪くなるようにも思えます。適度な運動は、日に30-60分の散歩で、すぐに効果 を出すのは難しいですが、常に継続することをすすめています。運動や食事でも効果 が得られない、あるいは当初から効果が期待できないような方は、薬物療法ということになりますが、コレステロール値が280を超えるような方は、当初から薬物治療をはじめながら、効果 的な運動や食事療法ができれば内服薬を減量していくことにしています。内服薬にも、わずかに副作用があり、その有無を定期的な血液検査でチェックすることになります。いずれにしてもコレステロールが高いからといって痛みなどの自覚症状を伴うことはなく、あくまで動脈硬化の予防が目的ですから、個々に応じて継続して行える効果 的な治療が必要となります。

・脳卒中と糖尿病(2003.11)

糖尿病を煩う方は近年、食生活の欧米化とともに増加し続け、2010年には1000万人にもなるのではと危惧されています。糖尿病とは体内のインスリンというホルモンのはたらきが十分に機能しなくなることで慢性的に、高血糖状態が持続する病態の事をいいます。高血圧や高脂血症などと同様、肥満や過剰な飲酒等の環境要因によるものが多く、生活習慣病の一つと言えます。症状は口渇や多尿をきたすこともありますが、一般 に血糖が高くても自覚症状に乏しく、様々な合併症によりはじめて診断される事も多いようです。合併症には糖尿病による網膜症、腎障害、神経障害から脳卒中や心筋梗塞など多岐にわたりますが、すべてに共通 していることは、血管壁に異常をきたして血流が悪くなることにより障害を来すということです。脳卒中の中でも脳出血よりは脳梗塞が圧倒的に多く、特徴としては、高血圧などによる脳梗塞がラクナ梗塞と呼ばれる細い血管に生じることが多いのに対して、糖尿病によるものは比較的太い血管が狭小化し大きな脳梗塞にいたる危険性が高いことです。頚動脈が細くなり、生命に関わるような脳梗塞の発症の危険性が高い、頸動脈狭窄症は、日本人には少ないといわれていましたが、近年増加傾向にあり、糖尿病の増加と無関係ではないようです。糖尿病の方の脳卒中の発生率は健常者と比較して4倍以上高いとされており、糖尿病の治療の目的は、脳卒中をはじめとした合併症の予防にあると言えます。その意味で、単に血糖のコントロールだけでなく、脳血管の状態や眼底所見等の合併症の有無の、定期的なチェックが糖尿病治療には不可欠と言えます。

・手足のしびれ(2003.10)

手や足のしびれは、なんとなくしびれた感じがするものから、はっきりとしたしびれ感まで、人によって感じ方が違うこともあり、診断と治療が難しい症状のひとつといえます。実際、心因性のものや原因のはっきりとしない場合もあるのですが、しびれの部位やしびれ方によっては比較的容易に診断できるものも多くあります。しびれの原因には大きく分けて中枢性のものと末梢性のものに分けることができます。脳外科で主に扱うことになる中枢性のしびれは、頭蓋内や脊椎内に原因があり、症状の部位から程度、疾患を推測することができます。左右いずれかの上下肢のしびれであれば頭蓋内、上肢のみのしびれであれば頸椎、下肢のみであれば腰椎というように中枢神経の分布に一致した症状を示します。頭蓋内でもっとも多いしびれの原因はやはり脳梗塞ですが、この場合は比較的急な変化で症状をきたしやすく、どちらかといえば症状だけで診断がつきやすいのですが、脳腫瘍や、多発性硬化症といった疾患では、なんとなく違和感がある程度のものや、必ずしも上下肢共に症状をきたすとは限らないことから、症状からだけでは診断がつきにくく画像診断が必須といえます。頸椎病変では肩から肘、または手にかけてしびれることが多く、特に朝起きたときにしびれていることが多いようです。腰椎病変では椎間板ヘルニアのように、大腿からふくらはぎにかけてのしびれが強く、高齢の方に多い脊柱管狭窄症という疾患では両側のふくらはぎや、足の裏のしびれ感が出てきます。これらに加えて、末梢性のものでは、糖尿病によるものや動脈硬化による血行障害、手根管症候群のような末梢神経の圧迫による手のひらの痺れなど実にさまざまな疾患がしびれの原因となります。治療は原因を取り除くことが可能なものは良いのですが、それ以外のものとなると内服薬などによる加療が主な治療となり、容易に症状が改善しない場合も多いのが現状です。ただ、しびれ感は不快なものであると同時に、不安感を招きやすく、少しでも原因について理解することが重要といえます。

・三叉神経痛(2003.09)

三叉神経は文字通り、頭蓋ないで三つ又に分かれた脳神経の事で、主に顔の感覚を司さどります。大きくわけて、三つに分かれた第一枝は額、第二枝は頬、第三枝は顎や歯といった具合に分布が決まっています。この神経領域に痛みがあると三叉神経痛ということになるのですが、痛みの原因は様々です。主に脳神経外科で治療することになるのは、血管の圧迫によるものです。頭蓋内の三叉神経の根っこの部分に脳血管が接触すると、血管の拍動が異常な刺激となって生じる痛みです。症状は特徴的で、他の原因によるものは感覚の低下を伴っていることが多いのに対し、血管の圧迫によるものは痛みだけが症状となります。痛みも持続的に痛いわけではなく、刺すような痛みが、長くても数分程度つづくだけで、一日中同じように痛むことはありません。しばしば歯磨きやヒゲそり、洗顔や物を噛んだりすることによって痛みが誘発されます。このため症状が強い時には食事ができないほどの痛みにもなります。症状の特徴を知っていれば診断は比較的容易なのですが、あまり一般 的に知れれた疾患とは言えないので、物を噛んだりすることができないことから、歯科にかかられる方もおおく、歯科治療をしても痛みが直らないことではじめて三叉神経痛と診断される方も多いようです。治療はカルバマゼピンという薬物が効果 的なことが多いですが、比較的副作用が多いこと、徐々に効果が弱くなって薬の量が増えることが難点といえます。麻酔科でブロック治療をすることもありますが、効果 がきれる度に治療する必要があります。いずれも対症療法といえますが、根治治療として神経血管減圧術という手術的治療があります。神経を圧迫している血管を神経からはく離する手術ですが、頭蓋骨に小さな穴をあけて、そこから顕微鏡操作で約2時間程度の手術ですが、かなり良好な治療効果 が得られます。内服薬で効果のない方や副作用に悩まされる方には手術が勧められます。

・物忘れ(2003.08)

ふだん、日常生活の中で人の名前が出てこない、物をおいた場所をすぐ忘れる、自分がなにをしようとしていたか分からなくなる、などといったことは誰でも経験していることだろうと思います。こういったことが重なると痴呆症になったのではと心配される方も多いと思います。忘れることは脳にとっては正常な活動のひとつで、物忘れをしない人はいないともいえますが、問題は、どの程度までが正常で、どこからが異常と適格に診断するかにあります。できるだけ客観的判断の目安としての、長谷川式テストなど様々な診断テストが考案されていますが、あくまでも目安であって絶対的なものはありません。その意味では物忘れというだけで痴呆症であるか診断することは難しいことと言えます。私の場合日常生活に支障があるかどうかと画像診断を一応の目安とすることにしています。痴呆症は一般 的には大きくわけてアルツハイマー痴呆症と脳血管性痴呆症がありますが、いずれも進行性の病気と言えますが、簡単にいえば、前者は脳が萎縮していく病気で原因は今の所明らかでないのに対して、後者は脳動脈硬化の進行により血流障害が脳の機能低下を来すものと言えます。いずれも初期の症状は物忘れで始ることが多いのですが、次の段階の症状として見当識障害といって、時間や場所に対する認識が悪くなることです。多くの場合季節や日付けがわからない、家への帰りかたや自分の今いる所が分からなくなるといったことです。この時点で、痴呆症の診断は容易につきますが、アルツハイマー性か脳血管性かを画像診断を含めて診断することが重要になります。前者の有効な治療薬はないとも言えますが、最近進行を抑制する治療薬が使用されるようになってきています。後者の場合は脳硬塞予防薬の投与で、ある程度進行抑制という意味での治療は可能と言えます。いずれにしてもやはり早期発見での進行抑制が必要で、きっちりと診断をつけた上で、内服薬による治療や、環境因子の改善(会話をする、ひとりきりにならない、趣味をもつなど)などによりを図ることが重要です。

・顔面 神経麻痺(2003.06)

顔面神経麻痺は、「朝、鏡を見ると顔がゆがんでました」というような比較的典型的な症状で発症します。顔面 神経麻痺には大きくわけて中枢性のものと末梢性のものの二種類ありますが、中枢性の場合は文字どおり脳や脳幹などに脳卒中や脳腫瘍等が原因となるものですが、通 常は急に顔が歪んで見えることは少なく、口元が歪む程度で、言葉が喋りづらくなることが主な症状となります。これに対して末梢性の場合には顔半分が下方に垂れ下がったように見えます。今回は、日常、診療所を受診される事が多い末梢性顔面 神経麻痺について書いてみます。症状は、はじめに書いたように、顔が歪んで見えることですが、額にししわがよるか、眼をしっかりと閉じることができるか、口元から水分がこぼれるか等により一応の重症度をきめることができ、回復時期や程度の目安となります。原因は風邪を引いた後や、冷たい風にさらされた後などにおきることもありますが、多くの場合ウイルス感染による炎症と考えられています。もっとも特徴的で、原因があきらかなウィルスによる炎症が、ヘルペスウィルスによるものです。耳介の後部に違和感や発疹ができるのと前後して顔の歪む症状が出てくればヘルペスによるものと考えられます。ヘルペスのの場合にはウイルスを抑えるお薬も効果 的となりますが、いずれの場合も治療はまず炎症を抑えることです。これにはステロイドの使用が効果 的との報告もありますが、使用しなくても十分なおすことができる報告もあります。当院では症状に応じて治療薬をきめることにしていますが、治療効果 は良好で、2-3週間後には回復しはじめ、4-6週間でほぼ治癒します。ただ数%程度で後遺症を残すことがあり当初からの適切な治療が重要です。比較的30-40才代の若い方に多く、女性の場合ひどくショックを受けられる方も多いのですが、直る疾患であることを知っておいていただければと思います。

・子供が頭を打ったら(2003.02)

今年の冬は寒い日が続いています。積雪のあった日には転倒して頭を打たれた方の受診が多かった様です。成人の場合は、頭痛、吐き気などの自覚症状によって、比較的診断がつきやすく、以前この項でも書きました慢性硬膜下出血などは、知っておいていただければ治療が遅れるということは少ないと言えます。しかし、小さなお子さんが頭を打たれた場合はどうでしょう。今回は頭を打った際の症状と注意点について考えてみます。まず、心配な症状として、痙攣があったり、意識が混濁している場合は頭蓋内出血や脳の損傷が考えられ、すぐに病院へ運ぶ必要があります。しかし、このような打撲は交通 事故等の場合に多く、日常的には椅子から落ちたとか、転倒して頭を打った等の場合が問題となります。頭痛や吐き気、気分不良等がなければまず心配はないと考えて良く、逆に、比較的軽微に思えても、何度も吐く、頭痛等の症状が続けば医療機関を受診される方が良いと言えます。症状の訴えができない赤ん坊の場合はどうでしょう。目安としては、やはり機嫌がどうかということになります。食欲があり、機嫌よくしていれば心配はいりません。数回吐いたとしてもその後、機嫌がよければまず大丈夫と言えます。、何度も吐いたり、顔色が悪い場合、あまり泣かないで元気がない場合は要注意で、受診していただくのが良いと言えます。この他、「たんこぶができれば大丈夫」とよくいわれますが、経験的には重症度には関係ないといえます。また、稀なことで神経質になる必要はありませんが、症状の発現に数時間以上かかる場合もあり、24-48時間程度は注意していただき、気になる症状があれば受診してただければ安心かと思います。

・アルコールと生活習慣病(2003.01)

お正月,飲み過ぎて体調不良を来した方も多いかと思います。過度のアルコールの摂取は肝臓をはじめ、依存症に至るまで、様々な弊害があることはどなたも御存知の事と思います。よく外来診察でアルコールはどの程度なら良いか、と聞かれることがあります。実際、高血圧や、高脂血症の方がアルコールをどの程度までなら許容できるかは難しい問題です。血圧とアルコールの関係でいえば、日本では、少量 のアルコールでも長期にわたって、例えば日本酒一合未満であったとしても、お酒を飲まない人と比べると高血圧の割合が高くなるという調査結果 が出ています。一方、欧米では日本酒一合相当のアルコールは高血圧の治療中でも許容範囲とされています。人種間の違いはあるにせよこの違いは、日本では比較的塩分の多いものが酒の肴になることも関係しているのではないかと思います。また高脂血症との関係でいえば、アルコールは善玉 コレステロールといわれるHDLコレステロールを増加させ、悪玉コレステロールのLDLコレステロールを減少させるはたらきがあるとされており、適度なアルコールは高脂血症による動脈硬化の予防には良いとされています。これらの点を考慮すれば私の考えでは、日本酒一合程度までが無難かなと思います。その他、ビール大びん1本、焼酎半合、ウイスキーならシングル2杯程度が適量 と考えられます。ただ、アルコールを長期に摂取した方のMRI検査での脳実質には萎縮傾向が見られることが多く、脳の状態にとってはできるだけ控えめが良いのは間違いない様です。
2002年度

・寒さと脳卒中(2002.12)

脳卒中には大きくわけて血管が詰まる脳硬塞と血管が破たんする脳出血に分けられますが、寒い冬場には脳出血の発症率がとくに増加します。東北地方などの寒い地方に脳出血が多いことからもわかるように、気温と脳出血には密接な関係があります。脳出血は血圧の上昇により、血管が破たんし出血すると考えられています。血圧は寒くなると末梢の血管が収縮し熱を逃がさないようにするため、上昇し、暑くなると汗を出して放熱しようとして血管が開き、血圧が下がります。つまり、冬には血圧が上昇する傾向になり、脳出血の発症が増えることになります。ただ単に寒い日に脳出血が多いというのではなく、急に寒くなる日などの、気温の変化が大きい場合により発症しやすくなるようです。気温の変化に得に注意する点として、外出・入浴・トイレがあげられます。暖かい室内から外出する際には十分暖かい服装で、早朝散歩などを習慣とされている方は気温が上がってきたころに外出するようにしましょう。入浴に伴う事故も冬には多く、脱衣室や浴室はあらかじめあたためておくこと(特にお一人暮らしの方は)、入浴直後に脳出血がおこりやすいことから、いきなり42度程度の熱いお湯につからず、はじめは、ぬ るめ(38-40度)のお湯で入浴しましょう。夜間、高齢の方はトイレに立つことが多くなりがちですが、暖かい布団から出て急に寒いトイレに入るのは避けましょう。素足のまま冷たい廊下を歩くことも危険です。 冬の脳卒中を予防するには血圧の変動と上昇をできるだけ抑えることが必要で、寒い時期の御自分の血圧がどの程度か、時々チェックすることも重要と言えます。

・未破裂脳動脈瘤(2002.11)

脳動脈瘤は破裂して出血するとくも膜下出血を来します。以前なら出血してはじめて動脈瘤の存在がわかったのですが、近年のMRI検査での脳血管撮影技術の進歩により、破裂する前の未破裂動脈瘤の診断が可能となってきました。つまりくも膜下出血の予防が可能になってきたと言えます。しかし、予防するといっても、手術が必要となり、手術には必ず危険性が発生します。人間のすることですから、100%安全な手術はないと言えます。数字だけからいえば、仮に5%の手術の危険性があったとして、将来のくも膜下出血の発症の危険性が5%以上なくては手術の必要性が主張でいないことになります。そのため、未破裂脳動脈瘤がいつ破裂するかの予測が大きな問題となります。破裂の危険率予測にはかなりのばらつきがあり、年間0.1〜1%程度といわれています。つまり年間0.1%の危険率なら50年でせいぜい5%の破裂危険率ということになり、危険率1%なら5年以上先を考えれば手術危険率の方が低くなる事になります。日本脳ドック学会では手術適応のガイドラインを定めており、70才以下で5mm以上の動脈瘤では手術適応ということになっています。しかし、たとえ0.1%の出血の可能性でも、毎日いつ出血するかという不安を抱えて毎日過ごすよりは手術を選択する人もいれば、出血した時はそれが自分の運命と考えられる人もおり、数字の問題以上にその方の人生観が重要といえ、医師が治療の適否をきめられるものではないと思います。この意味で未破裂脳動脈瘤が検出されれば、医師としては決して無責任な意味ではなしに、手術する、しないの最終判断が自分でできるだけの十分な情報と、適切なアドバイスが与えられることが最も大切なのではないかと思います。

・脳卒中の予防/高脂血症(2002.10)

高脂血症とは血中のコレステロールや中性脂肪の値が高い状態をいいますが、なぜ高脂血症 は治療の必要があるのでしょう?良くわからないままお薬を飲んだりコレステロールが高い 事を気にされている方がおられます。高脂血症は高血圧や糖尿病と並んで、動脈硬化の三大 危険因子といわれます。血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂肪分が高いと余分な脂 肪分は血管の壁に沈着し、血管の壁が分厚くなり、動脈硬化と呼ばれる状態になります。血 管の壁が厚くなると血液の流れが悪くなりやがて詰まってしまいます。これが脳の血管で起 きれば脳梗塞、心臓の血管が詰まれば心筋梗塞ということになります。つまり高脂血症は脳 梗塞や心筋梗塞を予防するために治療が必要ということになります。治療は食事や運動など 生活習慣の是正を中心に薬物療法を併用しますが、治療目標については動脈硬化学会が、目 標基準値を定めています。これによれば、高血圧、糖尿病、喫煙などの危険因子の多さによ り、総コレステロール値や、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロール値を低くす る必要があります。例えば危険因子のない方は総コレステロール240まで、危険因子が 1-2なら220まで、3-4以上であれば200までといったような具合です。中でも脳梗塞の 存在はそれだけで危険因子4以上となり厳しい管理が必要となります。脳梗塞にはMRIでは じめて確認できるような無症候性脳梗塞も含まれる事から、高脂血症の治療を考える上で画 像診断情報は非常に重要です。高脂血症の治療といっても単に数値が下がれば良いわけでは なく、各々の患者さんの状況の見きわめと、それに応じた目標値の設定が非常に大切といえます。

・一過性脳虚血発作(2002.09)

一過性脳虚血発作(TIA)とは、文字通り、一時的に脳細胞への血流が悪くなることにより、数分間から数時間程度の発作的な神経脱落症状を来す疾患です。以前から脳梗塞の前兆と考えられ、診断、治療には迅速な対応が求められてきました。血流が悪くなった神経領域により多様な症状を来し、言語領域であれば、急に言葉がでない、呂律が回りにくいなど、手足の運動・感覚領域なら、箸が持ちにくい、持っていたコップを落とした、歩きにくくなった、手足がしびれたなどの運動・感覚麻障害を来します。また急に片方の目の前が暗くなったり、視野が欠けたなどの、眼に関する症状(一過性黒内症)は比較的特徴的な症状と言えます。原因の多くは、頚部内頸動脈や頭蓋内の主要血管が細くなり(狭窄症)、一時的に狭窄血管が閉塞する場合や、狭窄した部位などにできた微小な血栓が頭蓋内の血管に詰まる場合など、かなり進行した頚部・脳血管の動脈硬化性変化が原因となります。症状が一過性で、わずかな時間出現したのち何ごともなかったかのように回復するため、比較的軽く考えられがちですが、近い将来大きな脳梗塞になる可能性が高い疾患です。一般には、一過性脳虚血発作が生じた際には脳梗塞の前兆あるいは警告症状として考えた方が良く、早期に医療機関に相談されることをお勧めします。私の経験からいえば、数時間から数日の間に脳梗塞にいたった方もおられるため、できるだけ早く原因を検索し、脳梗塞発症の予防の治療を開始した方が良いと考えます。

・慢性硬膜下血腫(2002.08)

慢性硬膜下血腫は、60-70才以降の比較的高齢の方に生じる、頭部打撲後の頭蓋内出血です。あまり聞き慣れない疾患かも知れませんが脳外科医にとっては日常的に治療する疾患で、一般 に知っておいていただきたい病気と言えます。脳の表面は、硬膜、くも膜、軟膜の3層の膜におおわれており、硬膜下出血は、硬膜とくも膜の間の出血をいいます。急性硬膜下出血と慢性硬膜下出血に分けられ、多くの場合、頭部の打撲が原因となりますが、急性硬膜下出血が頭蓋骨骨折を伴うような強い打撲で生じる場合が多いのに対し、慢性硬膜下血腫はごく軽微な打撲でも生じるといわれています。また原因が良くわからない場合もあります。出血は頭部打撲後すぐに生じるわけではなく、打撲後数日から数週間で、少しずつ脳と硬膜の間に隙間がで生じ、そこに血液が溜まってきます。血液量が多くなるにつれ頭痛や吐き気、手足の力が入りにくい等の神経症状があらわれるようになります。この段階で頭部打撲より約4週間程度経過していることが多く、症状が発現するころには既にかなりの量の血液量になり、手術が必要になりなす。手術といっても、局所麻酔で、頭蓋骨に1〜2ケ所小さな穴をあけて、溜まった血液を洗い流す手術で、生命に関わることはほとんどないと言えます。ただ、治療が遅れた場合、後遺症が残ったり、再発率が高くなる可能性があり、適切な診断と、迅速な治療が必要です。比較的高齢の方が頭部を打撲した場合、医師としては常にこの疾患の発症を考え、数週間は経過を見ることが重要と言えます。

・くも膜下出血(2002.07)

脳の表面にはくも膜とよばれる薄い透明の膜があります。主要な脳血管は表面にあり、脳血管が破たんして出血を起こすとそれは脳の表面かつ、くも膜の下の出血となり、これがくも膜下出血と呼ばれるものです。大半の原因が脳血管の分岐部が薄くなって膨らんでできた脳動脈瘤の破裂によるものです。破裂した動脈瘤からの出血は激しい頭痛を来し、程度が強ければ意識障害を伴い、生命に関わることになります。一度止血しても24時間以内に再出血する確率が高く、再出血の度に状態は悪化することになります。医師にとっては診断から治療まで迅速な対応が求められる疾患です。画像診断でくも膜下出血と診断されれば、金属製のクリップで動脈瘤を挟み込む手術が必要となります、最近では開頭せずに血管の内部から治療する血管内手術も行われることがありますが、まだ十分一般的ではありません。いずれにしてもまず止血する事が必要ですが、止血したのちも脳血管攣縮と呼ばれる血管が細くなる現象が発症後1-2週間で生じることがあり、程度によっては脳全体がはれたりして最初の出血と同様に生命に関わることになります。この病態については決定的治療法がなく、手術技術が向上したにもかかわらず、未だ、くも膜下出血の治療成績が20年前とかわらない理由の一つとされています。この意味では最善の治療はやはり予防と言え、最近では外来でもできるMRIや造影CTによる血管撮影で未破裂動脈瘤の検出に力が注がれています。

・頭痛(2002.06)

頭痛には痛み方や原因によってかなりの違いがあり、国際分類では10以上に大別され、100以上に細分化されています。日常診療で見られる頭痛は比較的限られたものになりますが、数多い頭痛の中で診療の際にまず考えることは、生命に関わる危険な頭痛か、そうでないかということです。生命に関わるものとしてはくも膜下出血と脳腫瘍が2大疾患と言えます。生命に関わらないものの代表的なものに片頭痛、緊張型頭痛があります。これらをまず痛み方から分類します。今までに経験したことのないような激しい頭痛がどんどん強くなるような場合、まずくも膜下出血が疑われます。何となく頭が重いような頭痛が毎日のようにあり、朝方強くなるまたは数カ月単位で強くなってきている場合には脳腫瘍の可能性を考えます。片頭痛は、血管が拍動するような頭痛がする、頭痛の前に目がちかちかしたり、暗くなったりする前兆があるのが特徴で、かなり激しい頭痛をともないます。緊張型頭痛は最も多い頭痛ではないかと思いますが、頚から後頭部にかけた鈍痛が夕方にかけて強くなる、または一日中症状が続くことが多い頭痛です。経験的に痛み方、持続時間、神経症状などから、かなりの部分問診だけで診断可能といえます、しかし脳外科医ならだれしも、風邪と間違われていたくも膜下出血や緊張型頭痛と診断されていた脳腫瘍の例を少なからず経験したことがあるはずです。この意味で最終的には頭痛の診断には確実かつ迅速な診断が可能なCTやMRIなどの画像診断が重要になると言えます。

・めまい(2)(2002.05)

めまいは比較的日常的な症状であるため、詳しい検査をする前に、内服薬等の対症療法になりがちです。しかし中には生命に関わる疾患であったり、根治可能な病気である場合もあります。私がいつも頭の片隅においているいくつかのケースのうちの2ケースについて紹介します (ケース1) めまいで通院している70才男性。ある日めまいがあり来院。いつもの点滴治療をして帰っていただこうとしたところ、座っていても体がぐらぐら揺れる、真直ぐ歩けない。いつもと様子が違う。早期の脳梗塞の可能性考え、CTでは発症早期の梗塞はわからないので、MRIの特殊な取り方で検査したところ、小脳梗塞と診断できました。いつもの症状と考えず常に神経症状の有無のチェックが必要と痛感したケースです。 (ケース2) 60才男性。右を向くとめまいがする。頭位変換性めまいで数年間、内服治療していたとのことです。まずは脳の検査をと考えましたが、右を向くと必ずめまいがする。意識がなくなりそうになる。通 常の頭位変換性めまいなら何年ものあいだ必ず右を向くとめまいがするとは考えにくく、頚部の詳しい検査をしました。頚をひねった際に頚椎の中を通 っている椎骨動脈を圧迫して起きるめまいとわかり、手術的治療で症状は消失しました。 めまいにはたくさんの要因や原因がありますが、ほとんどは重篤なものではなく必要以上に心配することはありません。むしろ治療する側がいかなる原因にしても、『心配がないめまい』かどうかを早期に診断することが大事であると考えます。

・めまい(1)(2002.04)

めまいは様々な原因で起こりうる日常臨床で最も多い症状の一つと言えます。多くは 天井がまわる感じや頭の位置をかえるとくらくらする等といった回転性めまいです。 一般的にめまいといえばメニエールとされてしまいがちですが、難聴と耳鳴りとめま いの症状があってはじめてメニエールの診断となり、実際にはそれほど多い病気では ないように思います。むしろ、睡眠不足、ストレスの強い時、体調をくずした際など に、寝転んだとたん、あるいは寝返りをうったとたんに回転性のめまいが発症する頭 位変換性めまいが最も多いのではと思います。検査所見で異常を示さないことも多く、 頭の位置によってめまいがおこるという特徴的な症状が診断の手がかりとなります。 症状は時間と共に改善することから、大事に至らない場合が多いのですが、我々臨床 医が常に注意すべき点は、それが頭位変換性めまいのような通常の治療で改善できる めまいかそうでないものかを早期に見極めなければならない点です。めまいの原因は 大きくわけて中枢性のめまいと末梢性のめまいにわけることができますが、このうち 中枢性のめまいには脳梗塞や脳出血、脳腫瘍、一時的な脳血流障害、脊髄の病気等が 含まれ、いずれも一般的な治療以上の処置が必要になります。やっかいなことに症状 の重い、軽いだけでは頭位変換性めまい等の末梢性めまいと区別をつける事は難しい 場合も多く、一般的な血圧、血液検査や、耳鼻科的検査に加え、画像診断が重要にな ります。次回様々なめまいのケースについて紹介します。

・高血圧と脳卒中(2002.03)

脳卒中には脳内の比較的細い血管が破たんする脳内出血、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の表面の太い血管にできた動脈瘤が破れて出血するくも膜下出血があります。
いずれも、高血圧症の合併が多く見られます。脳外科医が最も日常的に治療する疾患が高血圧であると言える程、脳卒中と高血圧は密接な関係にあります。動脈瘤の成因についてはわからない点がありますが、高血圧が進行すると脳内の細い血管が動脈硬化を来します。動脈硬化が進んで血管壁がもろくなった結果、血管が詰まる場合は脳梗塞に、血管が破たんする場合は脳出血になると考えられています。つまり原因は同じでも全く逆の結果が生じると言えます。脳外科医がこれら疾患をなんとか予防しようとする一つの手がかりとして前回この項でも書きました、無症候性脳梗塞の存在や、MRI検査によって行うMRAとよばれる脳血管撮影が重要になります。無症候性脳梗塞は年令と共にいくつかは見つかるものですが、年令相応以上であれば血圧の下げ過ぎに注意しつつ、脳卒中予防のためには十分な血圧管理が必要になります。また MRAでは脳血管の細い部分や動脈瘤の存在が確認でき、動脈硬化の存在がある程度判断可能で、降圧剤に加えた血流改善剤の投与や、手術が必要かどうかの判断に役立ちます。高血圧の治療の大きな目的の一つは脳卒中の予防にあります。つまり高血圧の治療指針として血管も含めた脳の状態を知ることが非常に重要になってきていると言えます。

・脳卒中の予防/無症候性脳硬塞(2002.02)

高血圧と脳卒中 脳卒中には脳内の比較的細い血管が破たんする脳内出血、脳の血管が詰まる脳梗塞、 脳の表面の比較的太い血管にできた動脈瘤が破れて出血するくも膜下出血があります。 いずれも高血圧が原因となって発症した場合が多く見られます。つまり、脳外科医が 最も多く治療する疾患が高血圧である、と言える程、脳卒中と高血圧は密接な関係に あります。高血圧が進行すると脳内の細い血管が動脈硬化を来します。動脈硬化が進 んで血管壁がもろくなった結果、血管が詰まる場合は脳梗塞に、血管が破たんする場 合は脳出血になると考えらています。つまり原因が同じでも結果は全く逆の事が生じ ると言えます。脳外科医としてはこれら疾患を発症してからでは遅いことを身にしみ て 感じていますのでなんとか予防しようということになりますが、その一つの手がかり として前回この項でも書きました、無症候性脳梗塞の存在や、 MRI検査によって行うMRAとよばれる脳血管撮影が重要になります。無症候性脳梗塞は 年令と共に何ケ所かは見つかるものですが、年令相応以上であれば下げ過ぎに注意し つつ、十分な血圧管理が必要になります。また MRA では脳血管の細い部分や動脈瘤の存在が確認でき、血管の見え方によっては動脈硬化 の存在がある程度判断可能で、降圧剤に加えた血流改善剤の投与を含めた治療に役立 ちます。高血圧の治療の指針の一つとして血管も含めた脳の状態を知ることが重要になってきていると言えます。

・脳卒中の予防/高血圧(2002.01)

脳硬塞とは脳の血管が詰まることによって脳細胞への栄養が絶たれ 脳神経障害を来す病気です。原因によ り、比較的太い血管が 動脈硬化により細クなり詰まるアテローム血栓性脳硬塞、主に高血圧により 穿通枝 と呼ばれる細い血管がつまるラクナ梗塞、心臓にできた血栓が脳血管に 流出して詰まる脳塞栓症二分類さ れます。 症状は詰まる血管の支配領域により様々ですが、一般的には 手足に力が入りにくくなる運動障 害、手足や顔がしびれるなどの感覚障害 言語障害、めまい、意識障害、目の前が暗くなるなどの視野障害 がある日 突然発症します。症状は数分で消失するものがあり、脳硬塞にいたる前の 警告と考えられ一過性 脳虚血発作と呼ばれます。 治療は抗血小板剤(チクロピジンや少量 のアスピリン)といわれる 血液を固 まりにくくするお薬が中心となリますが、急性期の治療として血管の中に詰 まった血栓を溶かす血管内治 療が行われ良い結果 が得られることが有ります。また手 術が必要な場合もあります。 予防としては脳硬塞 の危険因子である高血圧、高脂血症、糖尿病の治療が中心になり ますが 最近では症状を出してはいません が脳硬塞とよばれる無症候性脳硬塞が脳硬塞の予防 の点で注目されています。無症候性脳硬塞はMRIとい う画像診断機器によりはじめて 診断されます。近年の調査からこの無症候性脳硬塞が多く見られる場合と 見られない 場合をくらべると無症候性脳硬塞が見られる場合の方が将来症状を出す脳硬塞をきた す危険率 が高いと報告されています。つまり、 無症候性脳梗塞の有無の確認と定期 的な変化の観察ここれまでの危 険因子の治療に加え脳硬塞発症の予防に重要であると考えられるようになってきています。
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