脳神経ファイル
診療時間
時間/曜日
9:00−12:00
14:00−16:00
リハビリ/検査
17:00−20:00
※○は診察、△は検査およびリハビリのみ、
 −は休診です。
※土曜日は、9:00−13:00まで診療致します。
※休診日 木・日/祝日
※脳ドックは、随時受け付け致します。
診療科目
脳神経外科(MRI/CT検査)
内科・脊椎外科・リハビリテーション科
かづきクリニック
かづきクリニック
〒630-8115
奈良市大宮町5丁目1-10-1
TEL:0742-32-3201
※駐車場あります(20台)
クリニック前駐車場(3台)、第二駐車場(14台)
当院西隣の伏見駐車場の1番、2番、3番が使用できます。
駐車場位置については、受付でご確認ください。
ここでは毎月一回、マイタウン奈良に掲載されている輝いて生きるために/脳神経ファイルを紹介させていただきます。
脳と神経に関する病気や症状について少しでも知っていただくことで、無用な心配をせずにすむように、また必要な診療を受けていただけることの一助になればと思います。
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2015年度

・無症候性脳梗塞・大脳白質病変−脳卒中治療ガイドライン2015より−(2015.11)

脳梗塞は通常、脳の血管が詰まることによって、様々な症状で発症するものですが、中には血管が詰まっても症状を来さない事があります。MRI検査などで、たまたま血管の詰まりが認められることがあり、これを無症候性脳梗塞と呼びます。血管は詰まってはいないけれど、かなり動脈硬化性変化が進み、血流の悪い部分を大脳白質病変と呼び、脳梗塞の予備軍とされています。これらはいずれもガイドラインでは将来の脳梗塞発症や認知機能低下の高リスク群になっており、予防的な治療が強く勧められています。最も強く勧められる治療は血圧の管理で、血圧が高い方にはまず降圧治療が勧められます。無症候性脳梗塞を指摘されて、抗血小板剤(血液サラサラの薬)を服用されている方がおられますが、降圧治療をしていない方には、抗血小板剤は脳出血の危険性を高めるため、ガイドラインではむしろ勧められない治療になっています。当院でも無症候性脳梗塞が見つかった場合にはまずは血圧の管理を十分に考え、その上で頸動脈エコーや、MRIの所見などから、抗血小板剤の必要性について検討しています。大脳白質病変の予防には生活習慣病全般の改善が必要とされています。コレステロールを下げる薬剤が有効との報告もあり、高脂血症を伴う方には積極的に治療することが勧められています。当院ではガイドラインに沿った上で、これまでの経験も加味して、降圧療法、抗血小板剤治療など脳梗塞の予防に努めていますが、特に大脳白質病変については、強い抗血小板剤の必要性はないことから、血流改善作用に加え、動脈硬化予防作用や高脂血症改善作用を併せ持つEPAを使用し予防に努めています。ガイドラインも年々変化しますが、中でも脳梗塞予防における無症候性脳梗塞と大脳白質病変についての研究は日進月歩で、今後さらに様々な予防法が検討されていくと思います。

・脳卒中治療ガイドライン2015(2015.10)

つい先日まで、患者さんには熱中症対策について話をしていたかと思えば、もう秋も深まり、インフルエンザの予防接種が始まる季節になりました。
いつの季節も脳卒中への対策は必要ですが、脳卒中治療への基本方針を考える上で、最も参考になるものに脳卒中治療ガイドラインがあります。脳卒中学会が5年に一度、過去の研究データを参考に科学的根拠(エビデンス)に基づいた脳卒中治療方針をガイドラインとして示したものです。治療を標準化し、個人的な経験や知識だけに頼った治療をなくしましょう、と言うのがガイドラインの主旨です。当然、医師の経験は重要で、ガイドラインはあくまで参考ということになりますが、ガイドラインでは治療の目安を、強く勧められる治療から、行わない方がよいとする治療まで、5段階に分類しています。当然、行わねばならない治療をしないわけにはいきませんし、行ってはいけない治療をするわけにはいきません。そのため、当院ではできるだけガイドラインに沿った形で診療をすすめています。このガイドラインの中で、特に当院の診療において重要なのが「無症候性脳血管障害」の項です。無症候性脳血管障害の中には無症候性脳梗塞、大脳白質病変、無症候性脳出血、未破裂脳動脈瘤などがありますが、いずれも日常的に当院で検査や治療している疾患ばかりです。無症候性脳梗塞の治療は将来の脳血管障害の予防に大きく貢献します。ガイドラインは治療や検査技術の進歩とともに日々変化するものです。これにあわせて知識や検査技術を診療する我々も新しくする必要があります。今年ガイドラインが新たに示されました。
次回からはこれら無症候性脳血管障害について、新しくなったガイドラインでの治療方針などについて紹介させていただきます。

・頭痛の診断(2015.09)

今年は早々と秋雨前線が発生し、鬱陶しい曇天が続いています。この号がでる頃には爽やかな秋晴れが広がっていることを期待しています。
さて、今回は頭痛について。以前から何度も頭痛についてはこの欄でも書いたことがあり、また今回は何を?と思われる方もおられると思います。頭痛は大人から子供まで、日常的にごくありふれた症状の一つと言えます。しかし、このごくありふれた症状の中には、希ならず、大きな疾患が隠れている事があります。当院へは頭痛症状の方は毎日の様に受診されますが、今回は頭痛の方が来られた際に、どの様に考えながら、診断していくかについて書いてみます。まず、どんな痛みか。締め付けるような痛みの場合は、肩こりやストレスからの緊張性頭痛、ズキズキする痛みで拍動性の痛みであれば片頭痛、キリキリ刺す様な痛みは神経痛ではないかと大まかに、まずは考えます。いずれの症状にも共通するのが、急激な強い痛みがあったかどうか。急な痛みであれば頚部を屈曲してみます。頚部が硬いようならくも膜下出血の疑いが出てきます。急な痛みでなくても頚部が硬い場合は髄膜炎などの可能性も考えられ、頚部がうまく屈曲できるかどうかは大事な所見です。いつからの症状か、吐き気がないか、めまいがしないか、などについて確認して、「緊張性頭痛かな?」、「片頭痛では」などと考えながら、他にも考えられる事はないかなどを検討しながら、最終的に頭部MRIやCTで検査をします。検査の結果、考え通りの事が確認できることが大半ですが、緊張性頭痛と考えられたものが慢性硬膜下血腫であったり、神経痛と思っていたものが、解離性椎骨動脈瘤であったり、さらにはくも膜下出血であったり、ということも当然あります。何十年、脳神経外科医をやっていても、なかなか症状だけをきいて、間違いなく心配ないと思える頭痛はありません。様々な事を経験すればする程、「心配ないですよ」と言えることが難しくなるのが頭痛の診断だと思います。

・頭痛・めまい・しびれ(2015.08)

暑い。本当に暑い。気温が35度は当たり前、39度近くまで上がる日もあるほど、暑い日が続きます。この稿がでる頃はお盆も過ぎ、少しは暑さの勢いも衰えていることを期待しつつ、やはりそれでもまだまだ暑さ対策は必要。頭痛・めまい・しびれ、と来ればこの季節、やはりすぐに熱中症では?と心配になります。熱中症は症状によって重症度が分けられており、めまい、しびれ、などは初期の症状で、涼しいところで体を冷やして水分をとることが必要です。頭痛、吐き気、倦怠感などがあれば中等度の症状で、水分もとれない程であれば病院へ行く必要が、さらに進行して、痙攣や意識が遠のくなどになれば、すぐにでも病院へ行った方がよい状態となります。テレビや新聞などで熱中症には注意しましょう、と言われていても、具体的な症状についてはあまり理解されていないこともあるようで、熱中症はその症状を知ることが一番重要です。
さて、頭痛・めまい・しびれでもう一つ大事なこと、やはり脳卒中を忘れるわけにはいきません。どう見分ければいいか?これがなかなか難しい。暑いところで長時間いた、かなり汗をかいても水分を補給していなかった、など明らかに熱中症を疑わせる状況であったとしても、それは脳梗塞を来しやすい状況でもあります。特に普段から動脈硬化が強いと言われているような方などは、水分が少なくなると血液が濃くなり、固まりやすくなり、血管が詰まる危険性が高くなります。簡単に見分けはつきませんが、まずは暑いところにいたのであれば、涼しいところへ移動し、水分補給などして症状が改善すれば、問題はないと考えられます。しかし、それでも症状が続くようなら「軽い熱中症だから」と油断せずに、念のため、病院で検査を受けることが勧められます。暑さはまだまだ続きます。ご自愛ください。

・加齢による物忘れと認知症(2015.07)

最近の梅雨は、結構晴れている日が多い印象がありましたが、今年の梅雨は本格的で、鬱陶しい日が続いています。この稿がでる頃には夏空が広がり、梅雨明けとなっていることを期待しているのですが、いかがでしょう。
これからの季節、水分補給や夏ばて対策や、体調管理が難しくなりますので、夏本番にむけてご注意ください。
さて、以前にも書いたことがありますが、当院へ受診される方のかなりの方が、認知症について不安を持たれています。「最近物をおいた場所を忘れる」、「自分が何をしようとしていたかわからなくなる」、「人の名前が出てこない」などが心配のタネになる様です。このような場合、加齢による物忘れのことが多く、心配のないことがほとんどです。では、加齢による物忘れと認知症はどのような違いがあるのでしょう。まず一番の違いは、忘れている自覚があるかないかです。加齢による物忘れの方は、体験した出来事などの記憶はありますが、その一部の記憶がどうしても思い出せないので、忘れている自覚があるのですが、認知症の方は出来事自体を覚えていないので、忘れていることを自覚していません。結果、加齢による物忘れの人は心配になり、自ら医療機関を受診されますが、認知症の人が一人で受診される事はほとんどありません。本人よりは周囲の方が心配になり、一緒に受診されることが多くなります。この他、加齢による物忘れの方は理解力や判断能力は保たれていますが、認知症の方は話の内容などが理解できず、判断力も低下します。このため、認知症の方は生活に支障を来すようになりますが、加齢による物忘れの方は生活には問題は出てきません。また認知症は進行しますが、加齢による物忘れはさほど進行はしません。症状の時期により認知症かどうか診断がむずかしいことも多いのですが、まずはこれらのことを知っていただき、心配しすぎないことも必要かと思います。

・脳梗塞 命に関わる?(2015.06)

梅雨に入る前から、もうすでに気温の高い日が続き、今年もまた、蒸し暑い夏がやってくる様です。体調管理にはいっそう注意が必要な季節になってきました。毎年のように、水分をとりましょう、とこれからの季節はうるさいように言われますが、水分不足は脱水を招き、熱中症とともに脳梗塞の原因ともなります。脳梗塞と言えば先日、政治家の方が亡くなった際の病名が脳梗塞であったことから、「脳梗塞は命に関わるの?」ということで、脳梗塞と診断されたことのある方に不安が広がっているようです。皆さんご存じの通り、脳梗塞とは脳の血管が詰まる病気です。症状は様々ですが、長年続く生活習慣病や、運動不足、喫煙などが要因となり、脳血管の動脈硬化が進行することで血管の壁の滑らかさがなくなる事が主な原因です。いたんだ血管の壁では血液が固まりやすくなるために、その場で血液が固まって血管が詰まったり、できた血栓が血流に流されて、どこか別の場所の血管をふさいだりします。こうして血管が詰まった状態が脳梗塞となります。詰まった血管が、手や足を動かしたり、言葉を話す神経に血流を送っている場合には、手足が動きにくくなったり、しゃべりにくくなったり、様々な症状を来すことになります。詰まった血管が非常に大事な血管で、広い範囲で脳梗塞が起きた場合には急激に脳が腫れたりして生命に関わることもあります。また脳幹と呼ばれる非常に大事な場所の脳梗塞も、生命に関わる事があります。お亡くなりになられた政治家の方は、もしかすると脳梗塞が再発してこのような事が起きたのかもしれませんが、一般に脳梗塞の症状は数日から1週間程度で症状が安定することが多く、安定すれば生命に関わる危険性はありません。その後は再発予防が必要になりますが、生命に対する不安を必要以上に抱くことはありません。

・ホントに怖い脳の病気3(2015.05)

雨ばかり続き、肌寒かった桜の季節が終わったかと思うと、夏を思わせるような季節が一足飛びにやってきたために、体調を崩すが多く、ゴールデンウイーク前には風邪を引いておられる方もかなり多くみられました。気温の変化にはやはり注意が必要です。
1週間程度の休みがあけての診療が始まった日はなんとなく、頭も体もしゃきっとしないものですが、そんな日に限って、深刻な疾患が見つかる事もあるため、このGW明けも気を引き締めていたところ、こんな方が受診されました。「2週間程度前に急にズキーンとした頭痛があったかと思うと、すぐにおさまったが、それ以降何となく頭痛と吐き気が続く」と言う方です。
2週間経過してそれ程症状が進行していないことから、心配のない頭痛と考えがちですが、はじめに「ズキーンとする頭痛が起きた」ことが少し引っかかります。くも膜下出血の疑いがあるのではと考え、頭部MRIを検査しましたが出血などの異常は見当たりません。CT検査をしても異常はありません。これで異常なし、と言うには何となくその後頭痛が続く事も気になります。MRIで脳血管撮影(MRA)をしたところ、脳動脈瘤がみられました。脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血を来たしますが、MRAでまだ破れていない動脈瘤がたまたま見つかる事はよくあることです。今回も破れていない脳動脈瘤がたまたま見つかった?いやそうとも言えない。2週間前に脳動脈瘤が破れて出血したとしたら・・・。2週間も前の出血はCTやMRIではすでに時間経過とともにわからなくなっていることもあり、検査で出血がないからといって、安心はできません。やはり、くも膜下出血が気になるので、病院で髄液の検査をお願いしたところ、くも膜下出血が判明しました。すぐに手術をして大事には至りませんでした。「まあこれなら大丈夫」、と少しでも考えて、「様子を見ましょう」では、再出血して生命に関わっていたかもしれません。少しでも気になることは最後まで疑いの目で見ることをあらためて認識しました。やはり脳の病気はホントに怖い。

・コレステロール:食事制限必要なし(2015.04)

桜の春が到来したと思ったら、あっという間に桜は散り、季節は進みゴールデンウイークも間近となっています。これからの季節、健康診断を受ける方も多いと思います。健診でいつも注意されることが生活習慣病についてです。これまでの食事指導で、「コレステロールの高い方は、卵などのコレステロールを多く含む食事は控えましょう」と耳にタコができるほど聞かれた方もあると思います。厚生労働省も一日のコレステロール摂取は200mg以下を勧めてきました。それが、なんと、先日のアメリカで報告された、食生活ガイドラインによると、「コレステロールの摂取制限は必要なし」となりました。驚くべき事に、食事でいくらコレステロールを摂取しても、体内のコレステロールの量には影響しない、ということが理由の様です。
今後は日本でも同様にコレステロール摂取の目安は撤廃されると思われ、卵などコレステロールを多く含む食事を控えていた方は、その必要もなくなることになり、「これまでの食事指導はなんだったの?」ということにもなります。それでは、これからは脂ものなどを、いくら食べても問題はないか?というと、そうゆうわけには行きません。ステーキなどに代表される脂ものは、飽和脂肪酸と呼ばれる脂質が多く含まれ、この物質は体内のコレステロールを上昇させる働きがあり、今回のアメリカの報告書でも飽和脂肪酸の摂取は制限されています。またカロリーを取り過ぎることにもなり、肥満の元となり、やはり食べすぎはいけません。ではどうすればいいか?やはり今まで通り、何かに偏ることのないバランスのよい食事をしましょうと言うことになり、それ程指導には変化はないように思います。しかし、むしろかなりコレステロールの値が高い方は、これまで考えられていたほど食事での改善は期待できないことにもなり、早めに内服薬などでの治療を開始することが必要になってくると思われます。

・脳血管性認知症(2015.03)

3月に入り少し春めくかと思いましたが、この原稿を書いている時点ではまだ冬の寒さが続いています。この号が皆様に届く頃にはお水取りも終わり、春本番となっていることを期待しつつ、今回も認知症についてです。
認知症と言えば、ほとんどの場合アルツハイマー型認知症となりますが、認知症の約20%程度に、脳血管性の認知症が含まれます。症状はアルツハイマー型認知症では、記銘力低下が徐々に進行するのに対して、脳血管性の場合、記銘力低下はもちろんありますが、それ程強いものではなく、行動が遅くなったり、抑うつ的になったりと、ややアルツハイマー型認知症とは異なる症状がみられます。病識や判断力は保たれていることが多く、経過も、脳梗塞を発症してからわずかな期間で進行する場合や、症状の無いような小さな梗塞を繰り返すうちに、段階的に進行する場合があり、やはりアルツハイマー型認知症とは少し異なります。また、画像診断ではアルツハイマー型認知症がMRIなどの画像診断で海馬を中心とした側頭葉の内側をはじめとする、脳実質の萎縮性変化が特徴であるのに対して、脳血管性認知症は脳の血流障害が原因となる認知症です。MRIで比較的大きな脳梗塞があったり、症状にはでないような小さな梗塞が多数みられたり、かなり広い範囲で白質変性と呼ばれる血流の悪い部分がみられたり、と様々です。脳実質の萎縮は必ずしも伴いませんが、血流が非常に悪いとやはり萎縮も進行してきます。この場合、アルツハイマー型と脳血管性の混合型認知症と呼ばれる状態になります。治療は、脳血管性認知症もやはり特効薬は現在まだありませんが、脳血管障害が原因となる事がわかっていますので、ある程度予防することが可能です。脳梗塞を予防することつまり、生活習慣病に注意することが予防の第一歩です。また、症状には出ていない梗塞巣や白質変性がMRIなどの画像診断で多数みられる場合には、予防的な対策を立てる事で、脳血管性認知症は予防可能になると思います。

・認知症の科学(2015.02)

今年は、第一次ベビーブーム世代の方が、65歳から75歳を迎えることにより、日本は世界に類をみない、超高齢社会に突入し、認知症の患者数も250万人を超えると予想されています。今後ますます、認知症の予防と治療が重要になってくるのですが、現在、どの程度まで認知症の研究は進んでいるのでしょうか?
認知症のほとんどの原因疾患である、アルツハイマー病の原因はアミロイドβやタウ蛋白という物質が、脳細胞に貯まることによって、神経細胞が変性し、脳の萎縮を来たし、認知症に至るとされています。まだまだ未解明なことも多いようですが、原因の多くはこの二つの物質が関係しているとされます。治療についてはこの物質を分解したり、作らないようにする薬の開発が研究されていますが、いまなお実用化されていません。現在使用されている薬は、脳細胞の働きを活発にするアセチルコリンという神経伝達物質の濃度を高める薬が中心です。このため、認知症の進行を遅らせる程度の働きはありますが、なかなか、飲めば治る、進行が止まる、といった治療薬はまだありません。また、原因究明と治療に加えて大切なものは「診断」です。加齢に伴う物忘れなのか、認知症によるものかは判断がつきにくいことも多く、現在、日本でもより的確に認知症を診断するための大規模な臨床試験が行われています。画像診断、心理テスト、血液検査などを組み合わせたもので、近年この分野の研究はかなり進んでいます。現在は、MRIによる脳の萎縮の程度をみることが診断の中心ですが、最近ではPETという画像診断機器でアミロイドβやタウ蛋白の沈着の様子がわかるようになり、まだ症状の出ていない段階からの早期診断が可能になってきています。早期診断が可能になれば、早めに薬を服用することによって認知症の進行を防ぐことができ、やがては認知症を克服できる日が来るかもしれません。まだまだ時間がかかるかもしれませんが、その日が来るまで、少しでも日々の診断と治療でお役に立てればと思います。

・脳振盪「のうしんとう」(2015.01)

明けましておめでとうございます。今年で開院して14年目になります。
今年もこの欄の読者の方には脳卒中や認知症など、脳神経に関わる様々な情報を提供していきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
今年初めの話題は「脳振盪」。昨年末のこの欄でも、スケートの羽生選手の頭部打撲について少し触れましたが、近年頭部外傷を扱う脳外科医の中では、「脳振盪」については以前とはかなり異なった考え方がされています。以前なら、スポーツ選手などが頭部打撲後、しばらくの間の記憶がなかったが、頭痛や吐き気はなく、頭部CTやMRIでは異常がない場合、「脳振盪です。心配ありません。普通に運動などしてもいいですよ」と説明していたものですが、最近では、脳振盪は、一時的な記憶がないなどの症状に加え、頭痛がする、頭がぼーっとする、気分が悪い、などの症状も脳振盪の症状に含まれる様になってきました。さらには、頭部打撲後、頭痛や気分不良などの、脳振盪の症状が続いている間に、繰り返し頭部を打撲すると、致命的な脳損傷が発生する危険性のあることが知られるようになってきました。この、脳振盪後の症状が続いている間に、再度頭部を打撲して起きる脳損傷のことをセカンド・インパクト症候群と呼びます。まだ不明な点が多いのですが、脳振盪後の症状が続いている間は、軽い頭部打撲でも受傷をするのは避けた方がよいのは間違いないようです。頭部打撲をした際には脳振盪症状があるかないか判断して、必要であればCTやMRIの検査をして、症状が続いていればしばらくは安静にすることが勧められます。すでに、ラグビーやサッカーなどのスポーツ競技連盟では、脳振盪後の競技復帰基準が厳格に定められています。これは一般の方も同様で、「脳振盪だから大丈夫」ではなく、脳振盪症状を伴う頭部打撲に際しては、きちんと検査を受けて、早期の診断と十分な経過観察が必要です。
2014年度

・この一年(2014.12)

早いもので今年も、年の瀬になりました。振り返ってみると様々な事がありました。難聴の作曲家が実はきこえていて、ゴーストライターがいたり、あるのかないのか確定はしていませんが、恐らくないであろうSTAP細胞。税金の使い道が甚だしく間違っているにもかかわらず、泣きわめくだけの地方議員。なにやら年の初めから人を欺いたり、ごまかしたりあまり気分のよくないでき事が続きました。天候も不順で、夏はこの数年に比較してそれ程猛暑はつづきませんでしたが、集中豪雨による被害は甚大で、ゲリラ豪雨は今では当たり前のような現象になり、この冬はかなり駆け足で訪れ、季節外れの大雪になっているところもあります。秋には女性タレントが脳梗塞になったり、俳優さんがくも膜下出血で亡くなったり、芸能人の方が病気になるたびに、毎日の様にワイドショーでは病気の事を詳しく説明してくれていました。説明が過ぎると、視聴者に不安をあおることもあるようで、普段は、「これぐらいなら」と思われる方でも、念のため、と受診される方が増えます。しかし、まさかと思う様な疾患が見つかる事もやはり増えますので、やはりこの念のためが重要です。政治や経済で、あまり明るい話題はなかった様に思いますが、スポーツでは明るい話題として、テニスの錦織選手が大活躍し、冬季オリンピックでは羽生選手が金メダルを獲得しました。非常にうれしいニュースでしたが、羽生選手と言えば先日、激しく転倒して外傷を負っても、その後演技を続けた事に賛否が分かれました。その後大事に至らずに済んだのはよいのですが、最近では「脳震とう」はスポーツの世界では重要視され、頭部打撲後、頭痛や気分不良が続いたまま、再度、頭部を打撲すると、致死的な脳腫脹を来すことがあると言われています。その意味では競技を中止した方がよかったのではと思います。今年一年の出来事を振りかえるだけにしようと思いましたが、最後は、やはり脳の病気の事になってしまいました。来年もその先も、どなた様も脳の病気とは縁がないことを祈って、新しい年を迎えたいと思います。よいお年を。

・時間が勝負 脳梗塞(2014.11)

前々回にも脳梗塞について書かせていただきました。今回は最近の治療、主にt-pa静注療法についてです。脳の血管が詰まると脳梗塞になりますが、その原因の多くは脳血管の中で血栓が詰まることにあります。t-pa静注療法とは、これら血栓を溶かして、詰まった血管を再開通させる治療法です。これまでにも血栓を溶解する薬剤はありましたが、脳出血などの副作用が強く、そのため、これまでの急性期脳梗塞の治療といえば、できるだけ症状の進行を食い止め、予防する治療が中心で、症状を有意に改善させる治療法はありませんでした。これに対し、t-pa静注療法は、従来の血栓溶解剤より遙かに副作用が少なく、2005年から実際の治療に使用されるようになりました。しかし、すべての脳梗塞の方に使用できる治療法ではありません。発症からの時間が絶対的な条件になります。当初は、脳梗塞が発症してから3時間以内までしかこの治療は行えませんでしたが、現在は発症してから4−5時間程度にまで延長されています。発症からの時間が条件となる理由は、血管が詰まって、血流が途絶えた脳神経細胞は、まだ生きている状態であれば救出することはできるのですが、回復できない状態の神経細胞は、血流が再開すると破綻しやすく、出血を来してしまいます。つまり、ある一定時間以上経過して、血栓を溶解すると、脳出血という重大な副作用が出てしまうことになります。また、時間だけではなく、症状も重要になります。ごく軽症の方であれば、いくら時間が早くても、脳出血などの副作用がゼロではありませんので、この治療は実施されず、ある一定の症状以上の方にのみこの治療が実施されます。また、このほか、最近ではカテーテルによる血管内治療により、太い血管に詰まった血栓を吸引したり、除去したりする方法もあります。この方法では発症から8時間程度までであれば治療可能とされています。いずれにしても、脳梗塞の治療は時間が勝負。言葉がうまくしゃべれない、手や足の力が入りにくいなどの症状があれば、「少し様子を見よう」ではなく、すぐに医療機関を受診し、迅速に適切な診断を受けることが重要です。

・動脈硬化(2014.10)

「動脈硬化」、この欄でも何度か紹介し、実際の診療でも日常的によく使っている言葉です。すでにご存じの方も多く、十分な知識を持っておられる方もおられるとは思いますが、今回は「動脈硬化」について。
動脈硬化とは文字通り動脈が硬くなることです。血管には心臓から血液を全身へ送りだす動脈と、血液を心臓へ送り返す静脈があります。いずれの血管も年齢とともに弾力性が失われ、血管の働きが悪くなりますが、この現象が動脈に起きてきた場合を動脈硬化と呼びます。ちなみに、静脈も硬くなって、下肢静脈瘤の原因などになりますが、あまり静脈硬化と言う言葉は使われません。動脈硬化が進行して問題なのは、全身の臓器に血流を送る働きが低下することです。動脈硬化はある日急になるわけではなく、ある程度年月をかけて徐々に進行していきます。水分不足になった木が枝葉の方からだんだんと枯れてやがて幹のぶぶんまで傷んでくるように、動脈硬化も末梢の血管から進行しだんだんと太い血管に進展していきます。脳血管に動脈硬化が進行してくると細い血管の血流が悪くなり、MRI検査で白質病変と呼ばれる変化が増えてきます。さらに太い血管にまで動脈硬化が進行すると頸動脈エコーで血管壁の不整や壁の厚みが増してきます。同様な事が心臓の血管におきれば狭心症になり、さらには心筋梗塞に進展します。こういった意味で動脈硬化の進行予防が脳卒中、心筋梗塞といった成人病の予防に非常に重要になります。動脈硬化の進行要因として、主には生活習慣病である、高血圧、高脂血症、糖尿病があげられます。生活習慣病は動脈硬化進行の最大の要因で、盛んにメタボ健診を受けましょうと言われるのはひとえに動脈硬化の進行を予防し、脳卒中、心筋梗塞などを予防しましょうと言うことにあります。みなさん、この秋は健診を受けて、動脈硬化進行のサインが出ていないか要チェックです。

・再確認 脳梗塞(2014.09)

暑い夏も終わり、朝夕過ごしやすくなってきましたが、まだまだ日中は日差しが厳しい日もあります。水分補給は怠らないようにしていただければと思います。水分不足が原因の脳梗塞の方が、この2週間だけでも何人も受診されました。右上下肢の運動麻痺がある方、左視野が暗くなっている方、呂律が回りにくくなっている方、左下肢の脱力で歩行が困難な方。どの方にも共通するのが、ほとんど水分をとっていなかったことで、脱水により血流が滞りやすくなったと考えられます。更に加えて少し驚かされることに、症状がでてから受診されるまでに3日以上経過し、中には1週間程度してから受診された方もおられます。受診が遅れた理由としては、かなり肉体労働で疲れていて、寝ればよくなるだろう、まさか脳からの症状とは思わなかった、などです。水分不足による倦怠感が症状に気づくのを遅らせるのかもしれませんが、明らかな自覚症状があるのに、受診まで数日以上かかっていることにこちらが当惑するほどです。この欄をお読みの方であれば、脳梗塞の症状と、発症した際にはすぐに医療機関にかかった方がいいことはすでにご存じかと思いますが、まだまだ、一般的には脳からの症状に対する知識が乏しいのか、とも考えてしまいます。水分不足の有無にかかわらず、脳梗塞の症状についてしつこいようですが書いておきます。ある日急に、上下肢の力が入らない、言葉が出ない、呂律が回りにくくなった時は脳からの症状の可能性がかなり高く、視野の一部が急に欠けたり、見えにくい場合も脳の症状と考えられます。頭痛、めまい、ふらつき、しびれなどは必ずしも脳からの症状と言えませんが、注意が必要です。脳梗塞は時間を争う疾患です。原因によっては当初重症の麻痺があっても、早期に治療すれば症状が劇的に改善することもあります。当初は軽い症状であっても時間経過とともに悪化することもあります。脳梗塞と知らずに放置して症状がよくなっても、再発する事があります。少なくとも手や足に力が入らない症状があれば早期に医療機関を受診してください。

・特定検診でわかること(2014.08)

この稿が出るころはお盆も過ぎ、少しは涼しくなってる?
毎日のように新聞やテレビのニュースになっていた、熱中症で病院へ搬送される方の数もようやく少なくなってきていることと思いますが、それでもまだまだ暑い日は続くため、体調の管理には十分注意してください。少し気温が下がると、それまで外出する気にもなれず、少々のことではクリニックへおこしにならなかった方も、ようやく「健診でも受けておこうか」という気分になるようで、夏を過ぎて秋になると特定健診を受診される方が増えてきます。特定健診を受診される方の多くは普段、医療機関へ通院されていて、どちらかといえばご自身の健康状態に関心が高い方が多く、健診だけを毎年受けられる方は少数派です。特定健診の奈良市での受診率は昨年でわずか25%、4人に1人しか受診されていないのですが、受診されない方の理由の多くは、「面倒くさい」、「普段の調子がいい」などが多く、中には「健診で何がわかる?」といった理由も多いようです。特定健診は”メタボ健診”とも言われるように、生活習慣病の早期発見と、治療の遅れによる脳卒中、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の予防を目指している健診です。特定健診はおもに、心電図検査に加えて、肥満でないかを腹囲を基準に、高血圧、脂質異常、糖尿病のチェックを血液検査でします。異常があれば、生活指導や薬での治療などになりますが、動脈硬化性変化の進行度を見るには、血液検査だけでは十分でなく、健診項目にはありませんが、頚動脈エコーや、脈波検査、場合によっては頭部MRIなどで、無症候性脳梗塞のチェックなどが必要になります。特定検診をきっかけに、幸いにも頚動脈の狭窄がみつかり、手術をして脳梗塞を予防できた方や、無症候性脳梗塞がみつかり、早期から脳梗塞を予防されている方も多くおられます。健診はあくまで、きっかけですが、大事に至らずにすむ場合も多いことを知っていただければと思います。

・熱中症 基礎知識(2014.07)

夏本番。今年も暑い夏がやってきました。この季節、毎日の様に話題の中心となるのが熱中症。老若男女いずれの世代の方も暑さ対策が必要です。統計によると、10代は運動中の男女に、20−60代は肉体労働中の男性が熱中症に陥りやすく、高齢の方は男女問わず、運動もしているわけではないのに、日常生活中に熱中症に陥ることが多いとされています。特に屋内での発症が多く、高齢の方は出来るだけ屋内にいても室温を適温に保ち、水分補給が必要になります。
それでは、どんな症状が熱中症で、どのようなときに医療機関を受診すべきでしょうか。熱中症は症状に応じて3段階に分類されています。T度は、めまい、あくび、大量の発汗に加えて、筋肉痛やこむらがえりで意識障害を認めない。この状態では、涼しいところで体を冷やし、十分な水分補給をすることで対応可能な状態です。U度はさらに頭痛や嘔吐、倦怠感が強く、意識がもうろうとなり、集中力や判断力が低下した状態で、医療機関への受診が必要となります。経口での水分摂取が困難な場合は点滴加療が必要になります。V度になると症状は進行し、意識状態が悪く、反応が鈍くなり、脱水による血流不足のため、腎臓や肝臓など様々器官の機能低下をきたし、生命に関わる状態で、すぐにでも集中治療室などでの入院治療が必要になります。たいていの熱中症の方の症状はU度までが多く、意識がしっかりしていて経口摂取できるT度の状態であれば、医療機関を受診するほどではありませんが、高齢の方や独居の方、クーラーがなく適温が保てない環境の方などは念のため医療機関を受診されておくほうが良いかと思います。また、この季節さらに注意が必要なのは、熱中症と脳卒中の症状に重なる部分が多く、熱中症と考えて様子を見ていると脳卒中であったということもあります。いずれにしても、気になる点があれば早めに医療機関を受診しておいてください。

・大脳白質病変(2014.06)

今年も暑い季節が近づいてきました。毎年のように患者さんには脳梗塞の予防のためにも水分を十分にとるようにと言っていますが、今年は例年より早くからこのセリフが頻繁に登場しています。以前からも脳梗塞は夏に多いと、この欄でも書いています。これからの季節よりいっそう注意が必要になるわけですが、どうすれば脳梗塞は予防できるか?これがやはり一番難しいところです。特に、無症候性脳梗塞といわれる、大脳白質病変が見つかった場合はどうでしょう。大脳白質病変とはMRIで、脳の白質と言われる部分に、周囲よりも白く、点状、あるいは斑状に描出される部分を示します。
動脈硬化が進行し、血流が悪くなっているとされており、加齢に伴い増えていきますが、進行すると将来の脳梗塞や認知症の危険性が増すとされています。症候性脳梗塞の様に抗血小板剤を服用する方法もありますが、脳卒中予防のガイドラインでは推奨されておらず、これといった予防法が確立されていません。生活習慣病にならない様に運動不足解消、体重が増えないようになど、一般的な動脈硬化進行予防が重要ですが、すでに大脳白質病変がかなり進行している場合、やはり何かお薬での予防法がないかということになります。最近になり大脳白質病変の進行予防に魚の脂に含まれる成分がかなり有効であるとの報告が多くみられます。そのため、患者さんには魚中心の食生活にしましょうと推奨していますが、実際、イワシの脂を多く食するエスキモーの人たちには心筋梗塞、脳梗塞の発症がきわめて低い事がわかっています。またイワシの脂を摂取しやすくした薬剤もあり、当院ではMRIで大脳白質病変が多数みられる方には、脳梗塞、認知症予防のためにもこの薬剤を処方することにしています。その結果、脳梗塞の発症や大脳白質病変の進行はかなりの程度予防できていると思います。水分とって運動して、今年もやってくる暑い夏を乗り越えましょう。

・健診基準値が変わる?(2014.05)

先日、新聞紙面に健康診断の基準値が変わるとの記事が出たため、毎日の様に聞かれます、「新基準やと薬飲まなくてよくなるの?」と。確かに、人間ドック学会が示した基準では血圧は147/までなら正常で、LDLコレステロールは178までは問題がないことになり、その範囲であれば内服薬が不要になる人が出てきます。これまでも健診の基準値は変更されることは多々ありましたが、基準値が厳しくなることはあっても緩和されることはあまりなかったので、混乱がありそうです。基準を厳しくすれば新たに治療を開始するだけですが、緩和されると治療をやめることにつながり、「今までの治療は何だったの」と言うことになります。このため、日本動脈硬化学会などは基準を緩和することに反対していますし、安易に治療をやめることは人によっては危険なことがあり、慎重に検討されるべきとされています。そもそも、血圧や、コレステロール値を何のために測定し、治療をするかといえば、脳梗塞や心筋梗塞の原因となる動脈硬化の進行を予防しようということにあります。20年前までなら、血液検査や血圧測定でしかこれらをはかる物差しはありませんでしたが、現在では頸動脈エコー、脈波検査、MRI、CTなど様々な方法で動脈硬化の進行具合を知ることができます。血圧や、血液検査だけを目安に治療する時代はすでに古く、少なくとも、ある程度の基準値の範囲であれば、エコーやMRI,CTなどの検査で、問題なければ運動や食餌療法を中心に、問題があれば積極的に内服薬で治療する、といった総合的な検査の結果、治療を考える時代になっていると思います。血圧や血液検査の基準が変わることで、急に次の日から病気になったり、健康体に変化するわけではありません。血圧と血液検査だけで判断せず、個々の方々にとって、何が必要で何が問題かを様々な角度から検討し、治療していくことがこれからの診療であり、求められている医療だと考えます。

・慢性硬膜下血腫(2014.04)

最近、慢性硬膜下血腫の方を診断することが非常に多くなっています。
頭部を打撲して受診される方の多くは検査をして異常のないことがほとんどですが、中にはごく初期の状態から、手術が必要な状態まで、様々な段階の慢性硬膜下血腫が見つかることがあります。「頭を打って、しばらくしたら内出血が貯まることがある」ということをご存じの方が多くなっているからではないかと思いますが、中には症状が進行してから受診される方もやはりおられます。慢性硬膜下血腫とは、比較的高齢(75歳以降)の方が頭部を打撲した際に、その時は何ともなくても、4週間程度してふらつきや頭痛、手足の脱力などで発症し、場合によっては手術が必要になる疾患です。原因については、頭部を打撲した際に血管が傷み、炎症などを伴ってじわじわと充血するような出血が脳の表面に貯まり、やがて脳を圧迫するようになり症状を来すと考えられています。高齢の方や大酒家の方に多いのですが、その理由としては脳の萎縮が考えられます。加齢やアルコールの影響により、萎縮がある方は、頭蓋骨と脳の表面にかなりの隙間があるために、じわじわ内出血が貯まりやすくなります。ある程度貯まってきた内出血は自然に吸収されることもありますが、だいたい、4週間程度で症状を来すほどの量になってきます。症状をいったん来たせば、手術の適応となり、手術時期が遅れれば意識障害や痙攣などで発症することもあります。認知症のある方などは自覚症状の訴えがなく、歩けなくなったりして周囲が初めて気づき、かなりの血腫が貯まっていることもあります。逆に最近急に物忘れが進んできたと考えていたら、慢性硬膜下血腫であることもあります。気づかない程度の頭部の打撲でも慢性硬膜下血腫を来すことはありますので、頭部打撲後など、気になるような症状があれば一度検査を受けていただければと思います。

・意識がなくなる「失神」(2014.03)

春の行楽シーズンが到来し、一年の中でも最も過ごしやすい季節になりました。メタボで運動が必要であるにもかかわらず無精な方(私も含めてですが・・・)は「かなり寒いから」、「とても暑くて」など何かといいわけをして運動をいやがりますが、今の季節、いいわけはできませんので、是非とも、運動を始めるようにしましょう。ということで、日々生活習慣病の方の治療や指導をし、将来の脳梗塞の予防に役立つようにと診療していますが、脳神経外科である当院を受診される方には、頭痛やめまい、ふらつきなど様々な症状の方が受診されますが、中には「意識がなくなった」との症状で受診される方もおられます。意識がなくなるということは、一般的には脳に血流が流れなくなる、あるいは不足することを意味します。最も多い原因は自律神経の調節障害によるいわゆる「脳貧血」です。飲酒後入浴をしていると目の前が暗くなって倒れた、就寝後目が覚めてトイレに行った際に倒れた、などが「脳貧血」による失神です。このような方は、頭部の検査をして問題なければ、一時的に自律神経の調整がうまくいかず、脳への血流が悪くなった事が原因で、心配いらないと言うことになりますが、日常生活の中で特別な状況でない場合に意識がなくなった際には注意が必要です。頭部MRIで何も異常がない場合でも、不整脈などの循環器の精査が必要になりますし、それでも異常がない場合でも注意しなければならないのが「てんかん発作」です。てんかんには、ひきつけなど痙攣が伴う事が多いのですが、意識がなくなるだけの発作もあります。てんかんを疑う場合には脳波検査が必要になりますが、問題がなくても症状が繰り返せばてんかん発作の可能性が高くなります。何も異常がないからといって心配はないと言えない場合があるので「意識がなくなった」様な場合には専門医を受診するようにしてください。

・くも膜下出血の怖さ(2014.02)

まだまだ寒い日が続く今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
インフルエンザもピークになり、ノロウイルスや風邪なども混在して、体調を崩している方もおられるかと思います。この季節、頭痛がしたときは誰しも「風邪?インフルエンザかな?」と思われる方が多いと思います。
診療する側も、「何となく倦怠感があり頭痛がする」と言われればまずは「風邪気でしょう」となりがちです。頭痛に加えて、関節痛や発熱を伴っていればまずインフルエンザなどの感染症と考えて良いのですが、倦怠感と頭痛だけで、発熱、のどの痛み、鼻水、咳など一般的な風邪症状がないと、そうとは言えません。最も注意しなければならないのは「くも膜下出血」です。くも膜下出血は、脳の血管にできた動脈瘤が破裂することで発症しますが、この疾患の怖い理由は二つあります。まずは出血を繰り返すことで意識障害が生じ、やがて脳死やそれに近い状態に至る可能性があることです。もう一つは、脳血管攣(れん)縮です。脳血管の周囲は、本来は血管の外にはないはずの血液成分で満たされ、この血液成分が血管を収縮させ、脳への血流を途絶えさせてしまいます。結果、脳梗塞になり、四肢に麻痺を生じたり、意識障害を来すことになります。出血は発症して数日以内で繰り返すことが多く、脳血管攣縮は出血後1週間前後で生じます。つまり、初回出血後できるだけ早く診断をつけ、できるだけ早く治療を開始することが最も重要になりますが、初回出血の症状は必ずしも「今まで感じたことのない頭痛」ばかりではありません。「倦怠感が強くて頭痛がする」、「強い頭重感と吐き気がする」など、風邪症状と自己判断してしまうような症状もあります。風邪の季節、様々な症状の中に、怖い病気が隠れていることもあります。くれぐれもご注意ください。

・冬、脳卒中予防(2014.01)

明けましておめでとうございます。もう正月もかなり日がたってしまいましたが、今年初めてですので、ご挨拶を。今年の冬は寒い。気温が下がると多くなるのが脳卒中。2月に最も脳卒中が多いと言われ、気温が4度下がると脳卒中死亡の危険が5%上昇するとも言われています。気温が下がると血管が収縮し、血圧が上昇するため、脳出血が増加し、気温が下がると血液の粘調度が上昇し、血液が固まりやすくなるため脳梗塞が増えると言われています。このため、冬は脳卒中を予防するためにはできるだけ暖かくすることが必要になりますが、高齢の方はどちらかというとエアコンで部屋全体を適温に暖めるよりは、部屋の中で厚着をしたり、こたつに入ったり、就寝時は電気毛布で暖めたりすることが多いようです。部分的に暖めると知らず知らずのうちに汗をかいて、脱水傾向になり、脳梗塞の危険が増しますので、部屋全体を暖めた上で、こたつや電気毛布は緩めに設定し、冬場でもまめに水分をとるようにしてください。飲酒をする方は、アルコールで血管が拡張し、血流が良くなりますので、体はほかほか暖まりますが、アルコールが冷めてくると今度は血管が収縮し、血圧が高めになります。アルコールの利尿作用も加わって、脳卒中の危険が増しますので、長時間多量の飲酒は控えてください。この他、朝方暖かい布団から急に寒いトイレへ入ったり、入浴後、脱衣所が寒いと、急な気温の変化により血圧が上昇しますので注意が必要です。また、寒いと運動不足になりがちです。生活習慣病のある方は特に、家の中での体操やストレッチ、暖かい日は散歩などするようにしてください。まだまだ冬はこれからが本番です。脳卒中以外には風邪やインフルエンザなども流行してきています。体調管理には十分留意してください。
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